さらに辿る
幾分かすると道は開けた。
そこは……死体が放置されていた。
しかもまだ新しい。
そして、
僕……いや、僕たちはこの顔に見覚えがあった。
「……高槻」
そう、そこには高槻が惨憺たる姿で死んでいた。
しかも複数体。
「どういう……こと?」
「……分からない」
……分からないが、これではっきりしたことがある。
連中は人間をクローンする技術すらも保有していたことだ。
高槻ではない、FARGOにそんなものは無い。
このゲームの黒幕だ……。
――このときの僕はまだ、長瀬の存在を知らない。
「この顔が目の前に何個も並ぶのを想像すると、反吐が出るわね……」
いつになく毒舌な彼女。
……だが、奴を知っているものにとっては無理も無い反応なのかもしれない。
死して尚罵倒される男……この男もまた哀れだった。
顔は……粉々に粉砕されかけている。
マシンガンの掃射を喰らったようだ。
はっきりいって……見ていて気持ち悪いものだ。
よく郁未はこれを見ていられると――。
……そうでもないようだ。
もう吐く寸前の苦しい表情……。
「郁未」
郁未はつらそうな表情でこっちを向いた。
「もう、ここいる必要は無い。……行こう」
彼女を促す。
……死体など見ていて気持ち良いわけが無い。
僕たちは、そこから少しばかり先に進んだ。
「……ねえ」
「なんだい?」
郁未が、歩きながら僕に話し掛けてきた。
「……目的、無くなっちゃったね」
「……」
僕は、それにすぐ返事をすることが出来なかった。
クローンがいるなんていうことは予想を越えた出来事だった。
こんなことでは後何体高槻がいるんだか知れたものじゃない。
だが。
「……いいさ」
高槻は殺されていた。
僕たちと同じように考える人が、確実にいることが分かった。
ならば、それでいい。
もしこの先高槻と会うことがあったなら――。
「後は、生きている人間を集めてこの島を脱出すればいい」
――その時改めて殺し直せばいい。
「……そうだね」
「ああ」
郁未は何かいいたげな……ああ分かってる。
彼女はまだ自分がやることがある。
でも、それをあえて忘れた振りをしている。
……僕と、同じように。
だが、僕たちはまだ知らない。
高槻を死んで、管理者を失ったと思い込んでいた殺人ゲーム。
それがまだ続いていることを。
黒幕は、もうずいぶんと側で動いていることを。
そして。
――僕の限界も、もうすぐそこまで来ていたことも。
【郁未+少年:さらに西へ】