精神戦
ジャキン!
往人がべネリM3ショットガンを構え直し、少年を問い詰めた。
「お前がやったのか?」
その問いに、少年は言葉を選びながら、慎重に答えた。
「仕方なかったんだ」
事実を――話す。
「いきなり襲われたんだ。そこの男が持っている糸のような武器で」
往人はなにも答えない。いや、答えられなかったといった方が正しいか。
(くっ・・・・どうする?・・・)
彼の頭の中はフル回転してこの状況を打開する策を考えていたのだ。
ゲームの序盤にあった少年には、やる気は感じられなかった。
だから往人はベレッタを少年に渡したのである。
だけど、今はどうか。
確かに今の少年と話した限りでは。やる気にもなっていないようだし、気が狂ってしまったという印象も感じられなかった。
しかし、それでも最初に感じた得体の知れなさや、結局最後まで名前を明かさなかった胡散臭さは往人の心の中からは拭えなかった。
(くそう・・)
ベネリM3を持った手に汗が走っていた。
(さて・・どうしたものか・・)
一方で、やはり少年も窮地に陥っていた。
(国崎さんだったよな・・、あんな武器まで持ってたのか・・)
チラリと、偽典に目をやる。
(あの銃には・・この本も効果が薄いな・・)
銃弾を一回の射撃で一発しか出せない銃ならいざ知らず、マシンガンやショットガンの類には何枚も紙を使わなければいけない。
効率も悪く、あっと結う間に紙も無くなってしまう。
更にこの場合、一度に大量の紙をばらまかなければいけないので、下手をすると弾き損じた弾が自分に当たる可能性もある。
(潜水艦のときのように、最初に撃ってきたのをうまく反射さるしかないけど、果たして彼にうまく当たるかどうか)
話し合いで解決できればいいのだが、きっかけを出す糸口が見つからない。
下手なタイミングでそんなことを言えば変な疑いをもたせてしまう。
(ああ、まいったなぁ・・)
彼もまた、動けずにいた。
時間にして数分。だが彼等には何十時間にも思える時間が過ぎていく。
互いに相手の思考を読み取ろうとし、打開策を考える。
それは正に、精神戦。
【(033)国崎往人 (048)少年 お互いに様子見】