赤い瞳のレミィ
――時はわずかに遡って。
――ステイツでは……――
レミィは考えた。
誘拐された人間と再び生きて逢うことのできる確率が極めて低かった。
つまり、誘拐された人間は様々な交渉の結果、最終的には殺されてしまうのだ。
もちろん、ここはアメリカではない。
しかし、ここはそれ以上に危険な島だった。
北川を一刻も早く探しだし、合流しなくてはならない。
これ以上、大切なものは失いたくなかった。
ましてや、レミィにとって北川は今、もっとも大切な存在だったのだから。
必死に残された血の跡を追い、そして見つけたこの小屋。
この小屋の中に北川が居るかもしれない。しかし、中に北川がいるとは限らない。
無謀な行動で自らの命を危険にさらすことにならないとも限らない。
けれども『自分が躊躇している間にジュンの命が失われてしまったら……』と、
レミィは思った。
「一か八か……やってみるしかないヨ」
二度と大切なものを失うことのないように。
自分がどうかしていれば、それを失うことなどなかったかもしれないなどと
いうような、そんなことにはもう味わうことがないように。
相手が複数いることを想定して、レミィは考え得る限りの作戦を立てた……。
そして潜入を試みた。
――現在。
「動かないで! 動くとこの電動釘打ち機がユーの頭をぶち抜くネ!!」
澄んだ蒼色をしていたその瞳を、赤く血走らせてレミィは言う。
結花は銃を握っていたはずの右手を見やる。
そこには空になった自分の手があるばかりで、銃はドアに引っ張られたときに
取り落としてしまっていた。
「中に、ワタシの探している人がいるかどうか、見るだけヨ」
そういって、結花に釘打ち機を突きつけたまま、レミィは体を小屋の前に
移そうとした。
「ジュン!!」
北川の姿を認め、歓喜の声を挙げたレミィ。
「レミィ!!」
北川も、やや意外だったレミィの状況――結花に釘打ち機を突きつけている
ことだ――に驚きつつも、この再会に喜びの声を上げた。
直後、レミィは背後の草むらから何か物音がしたのに気を取られ、一瞬だけ
結花から目を離した。
草むらから顔を出したのは野ウサギだった。
「Whats!?」
レミィの一瞬の隙をついて結花は拳銃に手を伸ばそうと駆けた。
「Freeze!」
レミィの制止の声を結花は聞かなかった。
「Freeze!!!!」
結花の手が拳銃に間もなく届く。
レミィはついに引き金を……引いた!!
【残り26人】