美しき破壊神 再び


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オオオオオオオオオオオオォ………

空気の流れる音だけが響く渡り廊下を進む三人。目指すはこの先にある倉庫だ。
「ねぇ、何で倉庫なんかに行くのよ?」
「…周りをよく見てみろ。警備の兵どころか人っ子一人いねェだろ?」
「そんなの見れば分かるわよっ!だいいち、それと倉庫、何の関係があるのよ!」
詠美の問いに答えたのは繭であった。
「これはあくまで私の憶測だけど、警備兵のほとんどがマザーコンピューター周辺に集中的に配置されているの…
 だから、他のフロアの警備が手薄なのよ。つまり、この先の戦闘はさらに激しく、危険なものになる…
 それを踏まえた上で、オッサンは倉庫で物資を確保しようと考えたのよ、違う?」
今度は繭が御堂に問いを投げかけた。
「あぁ、ズバリその通りだ。ガキの癖に頭の回転だけは速ぇんだな、お前もろぼっとなんじゃねェのか?」
「その言葉、褒め言葉として受け取っておくわ」
お互いに鋭い視線を交し合う二人…そして、状況把握が出来ていないのが一人…
「??…イマイチよくわかんないんだけど…」
「お前は理解しなくていい」
「ちょっと!どういう意味よ!」
御堂は詠美の抗議をシカトし、繭と話し込む。
「で?オッサンは何が欲しいの?」
「そうだな…とりあえず社で拾った銃と同型のものをもう一丁、予備のマガジン、手榴弾をいくつか…
 それと、お前らと梓、千鶴、あゆの5人分の重火器だ。はっきり言ってお前らの武装じゃあ銃弾の餌食になるのが関の山だ。
 しかも素人だ。ハンドガンより、機関銃を持たせてやった方が確実だろう?」
「へぇ…オッサン、顔は般若だけど思いやりがあるのね…」
「バッ、バカ!そんなんじゃねえよ!ただ、お前らに犬死されるのが胸クソが悪りぃだけだ!」
「あらそう…どうでもいいけど詠美ちゃんが沈んじゃってるわよ」
それを聞き、御堂は視線を詠美に移す。詠美は二人から少し離れたところをトボトボ歩いていた。
「ふみゅ〜ん…いいもん…どうせあたし…バカだもん…」
「…ったく、面倒くせぇ奴だ」
御堂は自分のディバックから桃缶を取り出し、いつものナイフで蓋を開ける。
「ほらよ、これやるから元気出せよ」
「…え?でもこれって、アンタの分なんじゃないの?」
言葉とは裏腹に、詠美の顔には『マジで!?らっきー!』と書いてあった。
「そんな事ぁどうでもいい、お前に拗ねられるよりはマシだからな。ホレ、早く食え」
「な、なかなか気が利くじゃない。いいわ、アンタがそこまで言うんなら食べてあげてもいいわ、感謝しなさいっ!」
詠美は桃缶を受け取ると、ウキウキ気分でスキップまでした。
「オッサン、この扉かしら?」
繭の方を見ると、彼女はやや大きな扉の前に立っていた。御堂は見取り図と扉の位置を確認し、
「あぁ、そこだ。ホラ詠美、着いたぞ。桃缶は倉庫の中で食え」
「そうね、廊下で立ち食いなんか、お行儀悪いわよね♪」
すっかり機嫌が良くなってる。桃缶一つでここまではしゃぐ人間は彼女くらいであろう。
「扉…開けるわよ」
扉の青いパネルに繭の細い指が触れる。

ィイイイ…ン

扉が微細な機械音と共に開く…その刹那、倉庫の奥の暗闇で『何か』が鋭く光った。
「チッ!」
反射的に御堂の体が動いた。詠美を抱きかかえ、扉の前の繭の腕を引っ張り、『何か』の視界から離脱させた。
詠美の手からは、一口も食べていない桃が入った缶詰めが滑り落ち、繭は一瞬、何が起こったか理解できなかった。

ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダァン!!!!

桃缶が銃弾の雨によって跳ねあがり、弾け飛び、ズタズタに引き裂かれた。
…あの時、御堂が警戒を怠っていたら、彼らがああなっていただろう。

チリンチリンチリー…ン

俳莢された薬莢が倉庫内部の床で踊る音がする―――機関銃での攻撃だった。
「奇襲…失敗…シマシタ」
聞き慣れた事務的な声が響く。…間違いない、アイツだ。御堂は腰の愛銃を抜き、身構える。
「あたしの桃缶…」


【御堂組 HM−13と遭遇】
【御堂からもらった詠美の桃缶 死亡】
【 桃 缶 全 滅 】

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