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接近、遭遇


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何一つ無い。それがこの男を表す言葉。
共に歩む者は無く。その手に釘打ち機一つ握りて歩くのみ。
レミィ。相沢。
ふと、思えば。彼らは、彼の、この島に於ける「存在意義」だったのかもしれない。
長く共に居た者。僅かの間、共に居た友。
彼は――北川は、その二つを一度に失った。一つは、目の前で。一つは、己の手で。
………。
やる事はあった。それは、去り際に彼女達に言った。
「椎名という子を探す」
だが、彼は適当に歩き続けている。それもそうだ。場所など分かりはしない。
とりあえずは、何か情報が得たかった。誰かと会うか?いや、それは危険だ。……危険か?
っつーか、今更何が危険なんだ。
在るのは、己一つのみ。それを必死に守り抜く。それが、今、彼の為すべき事。
精一杯生き残る。その為には、何だってする。そうだろう?
例えマーダーに会っても、俺は生き残るさ。戦ってもな。
見てろよ、レミィ。相沢。俺は、バッチリ、お前らの分まで生きてやるぜ。

遠き空から。彼らは、北川に、笑いかけてくれたのだろうか。


少し歩いた。しかし、戦闘の名残か、あれこれと落とし物が多い。
ゴミは拾えって、学校で散々言われてるだろ?全く、みんな物を大事にしないよな。
嘆息。そこは、確かに、色々な物が転がっていた。
ナイフ。
クロスボウ。
そして――死体。
苦笑。……はは。ジョークにしちゃちとブラック過ぎたな。
見覚えのある死体。無論、北川がそれを忘れる筈が無い。
高槻。このゲームの、支配者。いや、「元」支配者か。
あの放送を知らぬ北川ではない。高槻が、処分された事などは知っていた。
ただ。あの頃は。
……どうしても、実感が湧かなかったんだ。
命を賭けたサバイバルゲーム。その中に、自分が居るという事。血生臭い現実。
人が死ぬという事。それは、彼にはあまりにも非現実的過ぎて。
俺は、いつからか、逃げたのかもしれないな……現実から。
逃避。虚ろな現実に逃げようとした。殺し合いというゲームから、いつもの日常へと。
そこで出会う。レミィに。
眩しいばかりに明るい少女だった。下らないジョークだって、彼女となら楽しかった。
そして。それは、いつしか、自分の心を現実につなぎ止める、大切な何かに。
……それはもはや失われた。だが、今更、逃げる気はしない。
逃げるわけが無い。負けるわけにはいかないのだから。……相沢には、な。

ナイフを拾い上げる。30cm程もある、大型のナイフ。十分な武器だ。
高槻の死体から、鞘を抜き取った。刃を隠し、ベルトに差す。武器入手、と。
そして、クロスボウ。一応、飛び道具だ。銃を持った相手と戦うのに使えるかもしれない。
しかし、拾い上げようとして気付く。戦闘中の再装填が非常に難しい。
力も要る。"戦闘"には使い辛すぎた。狙撃には使えるかもしれないが。
……捨てとくか。もったいないけどな。
後は何も無い。日が高い。心なしか暑さが増している。そろそろ放送だ。
日陰にでも、行くか。そんな事を思って、森へと足を進めた。
が。

……がさっ。

「え?」
「あ」
「あ?」
突然、森から出てきたのは――侍?違う。女だ。それも二人。二人とも刀を持っている。
気の強そうな女であった。しかも、ダブルで。
ううむ、こいつはキツいな。俺は、どっちかっつーとおしとやかな方が……。
………。
ま、冗談は止そうぜ。
「……真っ正面から人の事をじろじろ見るなんて、失礼な人ね」
「全くだ。レディーに対して失礼極まりない行いだ……」
溜息混じりに、首を振る。おっと、紳士的にだぜ。
「……それにしても、随分ご機嫌斜めみたいだな?」
冗談めいた会話。だが、その裏に潜む、ひやりと冷えた空気。
女――晴香の刀は、既に抜かれている。その刃は、北川の首の隣に。
釘打ち機は晴香の喉を捉えている。それは、最初に出会した時点で行った。
だが、もう一人。他人事のような様子で、この対峙を見る少女。七瀬留美。
もちろん、刀は既に抜いてある。右手に握り、とんとんと肩を叩いていた。慣れた様子。マズいな
……さぁて、どうすっかな……?
北川の顔に、不敵な笑みが浮かぶ。放送が、近い――。



【残り23人】

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