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正しい脱出のススメ


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「人数は減ってしまったが、今後のことを決める大事な会議だ。
 俺達だけでも先に進めるぞ?」
 蝉丸は確認するように言い、部屋の中を見回した。
――現在部屋に残っているのは耕一、初音、マナ、そしてあとは妙なお面だけだ――
「(TдT)妙なお面なんてひどいよ、蝉丸ぅ〜!!」
――つい呟いていたらしい――
「すまん」
「(´д`)月代って呼んでよぉ〜」
「……すまん、月代」
(´д`)ハァハァ、蝉丸、もう一回、もう一回呼んでぇ〜」
 調子に乗ってすがりついてくる月代に、蝉丸は軽く当て身を加え、『それ』を
静かにした。
「不憫だ。本当はこのお面の呪いも、早々に解いてやりたいのだがな……」
 蝉丸と月代に怪訝な視線を向けた3人に、言い聞かせるように呟く。
 それでその場は収まった。
 蝉丸は場が静まるまでの、ほんのしばらくの間だけ、この場にいない人物の
ことを思い浮かべていた。
――葉子は隣室に寝かせてある。彼女の寝ている部屋は窓のないものを選んだ。
 外敵の進入は難しい。だから、俺たちは彼女のことを考えるよりも、今は冷静
 に会議を続けるべき時間だ。……それにしても――
 一同がこの建物の中でも一番広い部屋に陣取っていることもあるのだろうが、
幾人か――晴香、留美、彰達のことだ――が席を外した今、室内は随分と寂しげ
な印象に変わってしまったな、と蝉丸は思った。
――しかし、それもしばしのこと。また元の、いやそれ以上の人数になる……――
「負傷者の傷が癒えるまで、もうしばらく施設の攻略は先送りにしようと思う。
 脱出の鍵はあそこ以外にもあるかもしれない。ほぼ確実に危険が待っている、
 あの施設の攻略以外で、何か俺たちが出来ることをしよう。そして、潜水艦
 のことはあの二人と、先行している例の少年、さらにそれを追っていった、
 郁美という名の少女に任せたい。心苦しい選択だが、今は出来るだけ多くの
 可能性を模索しなくてはならない時なのだから」
 そこで蝉丸は言葉を切った。


 皆に先を促され、蝉丸は話を続けた。
「さて、さっき話しかけていた、脱出の規模のことだ。実際、今もって殺る気の
 ある 人間がどれだけいるのかと言うことの方が問題だと思うんだ。だが、
 俺達が、 今まで 遭遇したやる気のある人間は、もう、全てこの世の者では
 なくなっている……」
 蝉丸はそこで軽く目を瞑り、うつむいた。
 今まで出会い、別れてきた人間のことを思い出しているのかのように。
 それを見て、皆はそれぞれの過去を振り返るような表情になる。
 今まで、どれだけの人間と逢い、そして死に向き合ってきたのだろう。
 単純には言い表せない、出来事。
――きよみ……――
 蝉丸は最後に、きよみの姿を思い浮かべた。
――一度は失われたと思っていた、そして、今度こそ完全に失われた、己の、
 思い人……。皆に正しき道を生きるよう身を呈して主張した彼女、きよみ。
 その思いを、死なせはしない……――
 蝉丸はゆっくりと口を開いた。
「結局、脱出までに残っている障害は少ないと思う。潜水艦さえ見つかれば、
 それで往復することも考えられるし、今は仲間を集めることこそが、一番
 大事な、俺達のできることなのではないかと考える。そのために、俺は……。
 俺は、島内全土に行き渡るような呼びかけを行いたい。皆もあの命を賭した
 放送は聞いただろう。あれが可能な施設を見つけて、皆に呼びかけたいんだ。
 殺し合いはもうお仕舞いだ。一緒に脱出のてだてを講じよう、と……。
 悪くない着想だと思わないか?」
 蝉丸の意見に、皆は首を縦に振った。
「そうよ、そうよね。もう、こんな殺し合いなんて続けさせられない。私は蝉丸
 さんの意見に賛成できる。でも、蝉丸さん。また爆弾を起動させられたら……」
 心配そうにマナは問いかけ、蝉丸はそれに余裕を持って答えた。
「あれはあの高槻とか言う男の独断だったはずだ。それに彰くんの言葉を信じる
 ならば起爆装置は彼の手によって破壊されている。だから、今回は管理者側が
 介入出来る余地はないはずなんだ。それに、もしものことがあったとしても、
 犠牲になるのは俺だけだ。損失は少ない。 もし、万が一のことがあったなら。
 ……そうだな、それを皆に知らせるために……」
 そういいながら蝉丸は、そばにくずおれている月代を見やる。
「月代を連れていく。耕一君達にはここを守っていて欲しい。皆が、再び集まる
 ための、この場所をだ」
 耕一は何か異論を挟みたかったようだが、蝉丸の言葉に口をつぐんだ。
 マナは、自分もついていきたいのかやはり得心のいっていない様子だったが、
「マナ君には看病の続きをお願いしたいんだ」
 蝉丸にそう言われると断れなかった。
「分かったわ。そこの半端病人を含めて、きっちり治療して待ってるから!」
 そういって、耕一を指さすマナ。
「みんなで、誰一人欠けずに待ってるから、あんたも、早く仲間を集めて帰って
 きなさいよ!?」
「……うむ」
 所在なげな耕一をよそに、頷く蝉丸。
「では、荷物をまとめてくる……」
「おい、ちょっと、俺の意志は!?」
 今度こそ不当な扱いを受けたという風に、耕一は抗議の声を挙げた。
「半病人は大人しくしてなさい!!」
 マナの伝家の宝刀、すねキックが耕一に炸裂する!!
「いってぇー!!」
「大人しくしてないからよ!」
 半ば無理矢理に元気良く叫んで、腰に手をやるマナ。
「遅くても、夜には帰りたいと思ってる……」
 蝉丸は月代を担いで部屋を出ていった。
 マナは腕を腰にやった姿勢をそのままに、室内へ視線を走らせた。
 視界にはいるのは……。
 がらんとした部屋。
 すねを抱える耕一。
 ……そして、うつむいたままの初音。
「まずはこの子を何とかしてあげなきゃね……」
 軽く耕一に向けて呟くマナ。
「へっ?」
 すねを襲う激痛に耐えていた耕一には、マナの言葉は届かなかった。
「ちょっと聞いてんの!? 貴方初音ちゃんのお兄さんでしょうがっ」
「ウゲェッ!?」
 再びすねを抱えながらうめく、奇妙な服装の耕一がそこにいた。

――……今年の耕一は厄年か?――
「俺って、こんなキャラだったっけ……? それにこのままだと、帰ってきた時
 よりも、ひどいことに……」

――私だって、こんなキャラじゃないわよ!!――
「男だったらぐだぐだ言わないの!! また蹴るわよ? そもそも、その変態
 みたいな格好何とかしなさいよ!!」

――彰お兄ちゃん……。どうか無事で……。無事に帰ってきて……――


 三者三様の室内。
 太陽は、今しも中天に差し掛かろうとしていた。

【晴香、七瀬(漢):市街地を後にし現在は北川と遭遇中。
 七瀬(男)   :祐介と美汐を探したつもりになり、市街地への帰路に就く。
 蝉丸、『それ』 :荷物は未選択だがまとめ次第出発予定。蝉丸完調まで僅か?
 耕一、マナ、初音:市街地残留。すね以外は耕一ももうすぐ本調子?
 葉子      :市街地残留。隣室で療養中
                            ────残り22人】

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