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雨がやむとき


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ん?雨が降ってきたみたいだな
少しずつ薄れていく意識の中雨粒の存在を感じた。
「うわっ!雨!」
「仕方ないわね。多分通り雨でしょうからどこかで雨宿りするわよ」
って俺置いてきぼりっすか?!マジっすか?!
「置いて行かれたくなかったらさっさと立ちなさいよ」
いや、そんなこと言われても。あの熊殺しのパンチを受けたらたとえ矢吹丈でも立ってられませんよ、姐さん。
「誰が熊殺しよっ!」
あれ?さっきから何で会話が成立してるんだ?ひょっとしてエスパー?
「何言ってるのよ。さっきから口にだしてたわよ」
う〜む、またやってしまったか。
「いいからさっさと立ちなさいよ。私濡れたくないのよね」
「了解しました。晴香お姉さま」
確かに婦女子をこの雨の中立たせて置くわけにはいかないからな。
俺が立ち上がろうとしたとき例の死亡者放送が流れてきた。


取りあえず俺達は木陰で雨宿りをすることにした。
放送があった後2人とも一言も喋っていない。
誰か知り合いの名前でもあったのだろうか?
ま、今はその方がありがたいけどな。
今の俺に話しかけられても「いつもの北川君じゃない!」って言われるのがオチだからな。
未だ降り止まぬ雨をぼんやりと眺めながら俺は考え事をしていた。

全く相沢のやつ。難しい問題残して逝きやがって。
人を信じるっていうのは難しいことなんだぜ、特に今のこの島では。
ま、それでも俺はこの島で生きてる限りこのスタンスを貫くけどな。
それが………相沢を殺した俺があいつにしてやれることだからな。
あの世で親友に顔向け出来なくなるようなことはしたくないしな。
相沢が言ってたようにこの殺人ゲームは馬鹿げている。
主催者の鼻をあかしてやるためには出来るだけ多くの人間で生きてこの島を脱出することだな。
そのためには………取りあえずあのCDの謎を解き明かすことだな。
頼りにしていた椎名っていう子はさっきの放送によると死んでしまっているようだった。
結構頭の良さそうな子で、見た目も将来が楽しみな子だったのになぁ。
っと考えがそれてしまった。つまり俺一人であのCDの謎に挑戦しなければならないということだ。
でもなぁ、調べるためのパソコンは壊しちまったからな。
多分この島にマザーコンピュータがあるとは思うけど、マザコンがある場所は警戒が厳重だろうな。
今のところマザコンで調べるという案は没だな。

「………せめてパソコンがあればなぁ」
思わず口に出てしまった。
「パソコンならあるわよ、確か」
「ふぇ?!」
七瀬さんのその言葉に思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。漢北川一生の不覚。
「七瀬さん!それ本当か?!」
「う、うん。確か蝉丸さんが持ってたわよね、晴香」
「さぁ、私は知らないわ」
晴香さんは興味が無さそうな感じだった。だがそんなことは今の俺にはどうでもいい。
前に調べたときはあまり収穫が無かったけどあの後護がやってた事を少しだけ思い出した。
あの通りにやれればもう少し詳しいことが分かるかもしれない。
「でも、何でパソコンが必要なのよ?」
俺は七瀬さんにCDの事をかいつまんで説明した。

「ふ〜ん、そのCDの事が分かればこの島から脱出出来るかもしれないってわけね」
どうやら晴香さんも少しだけ興味が沸いてきたようだ。
「そういうことです、ハイ」
「でもさ、何でそんな物が参加者に渡されてるの?そんな物があったら簡単に逃げられちゃうじゃないの」
「うぐ?!痛いところをつきますね。晴香さん」
そう。そのことが俺が一番引っかかっていたことだ。
この殺人ゲームの目的はよく分からないが参加者が逃げるようなことがあったらマズイはずだ。
優勝者1名ならこのゲームの口止めも可能だろうが何人もの人が逃げ出して殺人ゲームのことを
ぶちまけたら主催者はおしまいだろう。
「それでも、調べてみる価値はあると思う。と言うわけでその蝉丸さんとやらのところに案内してくれ」
「いやよ」
「ち、ちょっと晴香」
「私達は私達でやることがあるのよ」
「よし、分かった。じゃあその蝉丸さんのいる場所を教えてくれ。俺一人でそこに向かうから。
 あ、後取り上げた武器その他も返してくれ」
「ダメ」
「何で?!」
「あなたのこと完全に信用したわけじゃないもの。あなたに武器を返したら蝉丸さん達を殺しに行くとも限らないでしょ」
「晴香!言い過ぎよ!」
「黙ってて!七瀬!」
「俺は………俺は人は絶対に殺さない!」
「そんな言葉で信用できるわけないでしょう。現にあなた私と最初に会ったときに武器を私に向けたじゃない」
「う?!」
「それにもし誰かがあなたを殺そうとした時にも人を殺さないって言えるの?」
「俺は………俺は誓ったんだ。親友を………相沢を失ったときにもう人は殺さないって誓ったんだよ!」
「「相沢って相沢祐一のこと?」」
「あ、ああ。2人とも相沢のこと知ってるのか?」
「私は名前だけしか知らないけどね」
「そんなことより今の言葉一体どういう意味?」
俺は2人に話した。
相沢に会ったときに記憶喪失になっていたこと。
相沢を俺が殺したこと。
そして相沢の最後の言葉を。

「………あのヘタレ」
ポツリと晴香さんがそんな言葉をつぶやいた。
「だから俺は人は殺さない。そして今島にいる人みんなで生きて帰りたいんだよ。頼む!」
俺はその場で土下座をした。
雨でぬかるんだ泥が体に付く。
今の俺はきっともの凄く格好悪いだろうな。
そんな考えが頭に浮かぶ。
いいさ。どんなに格好悪くても構わない。相沢に顔向け出来なくなるよりはずっとマシだ。
「………顔を上げなさいよ」
そう言われて顔を上げた俺が見た晴香さんの顔はさっきまでの厳しい顔では無く、少しだけ優しい感じがした。
ちょっとだけ惚れたかも。美坂に少しだけ似てるしな。
「ほら!」
「うわ!」
突然荷物を投げられた俺はその荷物に潰されてしまった。カッコワリィ。
「何やってるのよ、情けない」
うわ!そんなはっきり言わなくても………。
「でもさっきも言ったけど私達はやることがあるから蝉丸さんのところには一人で行ってよね」
「OKOK!」
「まったく、調子いいわね。取りあえず雨が止むまで待ちなさいよ。わざわざ濡れることもないでしょ」
そう言って晴香さんはそっぽを向いてしまった。
「ゴメンね、北川。晴香素直じゃないから」
「ちょっ!七瀬!それどういう意味よ!」
「どういう意味も何も言葉通りよ」
2人のやりとりが面白くて思わず笑ってしまった。
「あんたも何笑ってるのよ!」
「わ!晴香さん!落ち着いて!真剣はやばいって!」
「うるさい!そこにじっとしてなさい!」
「じっとしてたら死んじまうだろうが!」
俺は晴香さんから逃げ回りながら少しだけここに来る前の日常を思い出した。
相沢と俺と水瀬さんと美坂の4人でふざけあっていた日々を。
もうあの日には帰れないけど今はこの幸せを楽しもう。

雨は未だ降り続けている。
だがいつか雨は止むだろう。
その時にみんなで心から笑える日が来る。
そうだろ、相沢………。


取りあえず今は晴香さんを落ち着かせる方法を考える方が先決だけどな。

【北川 自分の荷物を取り戻す】

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