今語られる真実
この大会の作られた理由、それは――贄――
不条理な理由で殺されたことによって生まれる様々な感情。
悪意、絶望、恐怖、殺意、怨恨。
空に浮かぶ呪いの求める呪詛。
飽きる事を知らぬ呪いの欲望を満たす為、そしてその力を掠め取るため。
その計画を考えついたのは『FARGO』
しかしその力を結晶化するにはあまりに技術不足であった。だからFARGOは援助を求めた。
『長瀬』のトップ、長瀬源之助に。
空に浮かぶ船の中、老人は一人独白した。
――始めは好奇心だった。これほどの呪詛を秘めた物はグエンディーナでも見たことは無かった。
――新たなる生命を生む悦び、未知なる物に挑戦する快び、それは魔術師としての性。
――己の力を過信していた、たかが呪詛程度簡単に消去できると思っていた。
――しかしその力のごく一部を結晶化するのに成功したとき、自らの過ちに気がついた。
――周りの科学者どもはただ浮かれていた、実験の成功に酔いしれて。
――しかし私には『力』があるが故にその秘めたる力に気がついていた。
――気がついたときには手遅れだった、封印の中で奴は確実に力をつけていた。
――すでに私が相手を出来るレベルでは無くなっていた。
――封印を破らないのは餌が手に入るからだ、上質の贄が。
決着は自分の手でつける、他の全てを犠牲にしてでも。
――それからは奴を弱体化するための手段を探し回った。様々な禁呪にも手を伸ばした。
――各方面に援助を求め、長瀬としての力も付けた、各地の能力者とのパイプも作った。
――計画に気が付いた高槻を処分してFARGOの力を削いだ。実権はすべて長瀬へ。
この計画は2つの鍵で成り立っている。一つは人選。
空に浮かぶ呪いは呪詛を求める、それゆえにあるものに弱いのだ。
それは愛情、友情、希望、自分の命を捨ててでも相手を守ろうとする善き心。
それゆえに人選を長瀬の手にまとめる必要があった。
そしてもう一つの鍵があった、それは能力者。
呪いを高めるのはさらなる呪詛、しかし魔術の力を高めるのは強き魂。
「神奈よ、今回の大会がお前の最後です。準備は全て整いました。
この島はすでに血で汚れています、しかしそれを超える思いで満たしました。
そして世界でも最高ランクの能力者達の魂。
長瀬源之助、生涯最大の呪文でお相手します。」
他の長瀬は死に場所を決められた、それは若さゆえの特権。
しかし源之助はそれができない、すでに命の使い道は決まってるからだ。