地下より香る誘惑の香り


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「二人とももう死んでしまってたのか」

彰は降りしきる雨の中ただ空を見上げていた。
バラバラになりそうになる心を繋ぎ止める鎖、それは初音を無事に脱出させるという思い。
初音を思うということに関しては彰も内より生まれし鬼にも違いはなかった。
愛情と肉欲という致命的な違いはあったが……。

彰は思う。
すぐにでも初音の元に戻るべきか、それとも周辺をもっと探索して安全を確認してから戻るべきか。

鬼は思う。
初音の周りの男どもを始末するか、初音の安全を確保した上で狩りを楽しむか。

彰の中は初音を中心にまわっている、それは疑うことすら必要の無い事実。
『理性』と『本能』両方が認めた美しき花嫁。
しかし、その気持ちを揺さぶる事件が起きた。



それは雨の中、診療所に向かっていた時のことだった。
周辺の探索に変更するにしてもこのまま戻るにしても少々離れすぎていたためだ。
そして止みそうも無い雨を恨めしげに思っているときに岩穴を発見したのだ。
雨宿りと人が居ないかを調べるために岩穴に入ったときそれは見つかった。


「この床掘られた跡があるぞ……何が埋められてるんだ。」
『理性』の奴が独り言の抜かしてやがる、だがそんなことはどうだって良い。
この場所から微かに血と『女』の香りがする。同族の女の極上の香りだ。

余り深く埋められていなかったので比較的簡単に掘り返せた。
そしてそこに在ったのは……。

「隠し階段……、この下に何があるって言うんだ。」
プンプン匂うぜ、間違いないこの下に『女』がいる。

しばらくはおとなしく辛抱して後から愉しむつもりだったのにな……。
この武装ではあまり無茶もできないしな、どうしたものか……。


【彰 施設への別の入り口発見】
【突入するか退くかは次の書き手さん任せです。】

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