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エンプレス二人


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「……大丈夫か?」
 見目麗しき二人の戦乙女の活躍によって、程良くボロボロになった北川潤(男子029番)に国崎往人(男子033番)は遠慮がちに声をかけた。
「ふぁい…だいじょうぶ…れす」
 あの後、またまた北川は失言を連発し、彼はボコられて地面と抱き合うハメになったのであった。
 往人からしてみれば北川の様は”身から出た錆””口は災いの元”以上でもそれ以下でも無かったが、さすがにここまで無惨な姿をさらけ出されると少々面食らってしまったのも確かである。
 さて、そんな北川を撃破した張本人である二人といえば、一度は小屋までついていく素振りを見せていたのではあるが、いまや「もう、勝手にしろ」と言わんばかりに北川と往人の側を離れ、彼らから少しはずれた木を庇にして、北川から譲渡された武器をきゃぁきゃぁ言いながらなでくりまわしていた。
 一行に降り止まない雨、立ちこめる湿気、お祭り騒ぎの2匹の蛮族と失意の2人。何とものどかな状況であった。
 うんっ、と大きく伸びをして北川は立ち上がる。そして身体にまとわりついた泥や埃を左手で払い落とすと、やれやれといった面もちで往人の方へ向き直った。

「慣れてますから…と言いたいところだけど、あういうタイプの女性はちょっと特異かもわからんですね」

「まったく同感だな。俺の知己にも何人かはっちゃけたヤツはいないでもないが…あそこまで益荒男な女となるとな」

「まぁ巳間さんは見た目は勝ち気で負けず嫌い、責任感の強いしっかり者で、曲がったことが大嫌いってな具合の頼れる姉御って感じですけど、そういう人に限ってワルとつるんでヤクを横流ししていたり、幼児虐待癖があったり、ボーガンで鴨をズコバコ撃ってたりするので十分な注意が必要でしょうな」

「手の施しようがないって感じだな。七瀬…だったかあっちのザンバラ髪の方はどうだ?」

 往人は器用に手榴弾をお手玉代わりにして、巳間晴香(女子092番)と遊びに興じている七瀬留美(女子069番)をアゴで指し示した。

「ああ、七瀬は元クラスメートでしたからそこら辺のことはよく知ってますよ。本人曰く『朕は乙女を目指してるモジャー』だそうですけど、実際はトイレの水をガバガバ飲んで、全裸で『コロされるー』って叫びながら校内を駆けずり回ったり、火葬場で大仁田バリに「熱くなってるか!」ってマイクパフォーマンスするような漢でした」

 はぁ、と軽く北川はため息をついた。

「救いようがないって感じだな」

「転校してちっとは変わったかとは思ったんだけどなぁ。なかなかどうして上手くいかないもんです」

 そういって北川は肩をすくめると、ポリポリと頭をかいた。

「それよりも…ここで足踏みしてて大丈夫なんですか?」
「さすがにやばいな。あまり時間食わすわけにはいかないんだ」

 往人は鬱陶しげに天を仰いだ。鉛色の空からはひっきりなしに雨粒が降り注いでくる。どうもこの雨は一向にやむ気配を見せない。

「なら、行きますか」
「そう…だな。足元に注意して、ダッシュで行けばずぶぬれちょい前程度で済むだろう。スパッと行ってスパッと用事を片付けてくるか。それまで悪いがよろしく頼んだ」
「オッケー。水先案内人のお役目、請け負わさせて頂きますよ」

 北川はそういうと胸元からレーダーを取り出して画面をチェックした。スフィーを表す光点は依然として先の場所と変わらずに表示されている。

「うっし、動いてないな……。巳間さぁん!! 七瀬ぇ!! ちょっと国崎さんをスフィーの所に連れていくわ! すぐに帰ってくるからそれまで荷物頼む!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! あんた達本気なの!?」
「雨降ってんのよ! すっころんで泥まみれになってもしらないわよ!」

 北川は晴香達に向かって叫ぶやいなや、森の奥へと駆け出していた。そしてそれに続くように往人が後を追う。たちまち晴香と七瀬の視界から二人の姿が小さくなって消えていった。

「こんな雨の中をねぇ…なんとも手の施しようが無いわね」
「どーかん。まったく救いようがないわね」

 二人は顔を見合わせて深くうなづきあった。

【北川 志保ちゃんレーダー、CD各種、釘打ち器のみ持って小屋に向かう】
【国崎往人 北川と共に小屋へ】

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