壮大なムービー
「あ〜、やっぱここだよ…」
『PassWord 実在する魔法の国の名は?』
前の解析の時もここで詰まった。
なんとかこれを回避しようと頑張っているのだが…。
「くそー…。回避できねー。適当に入れまくるしかないのか?」
それが非常に非現実的な方法であることはわかっている。
だが他に思いつかない。
「ねぇ、どうしたの?」
スフィーが北川の後ろから覗きこんだ。
「あ? お嬢ちゃんにはPCわかんないだ…」
「なんだ簡単じゃない。グエンディーナよ」
沈黙が訪れる。
「は?」
「だからぐ…え…ん……」
人差し指だけで、カタカタとキーを押すスフィー。
入力ボックスに次々と文字が表示される。
『h@5y』
再び沈黙が訪れる。
「むきーーーーーーーー!! なんでよ!!」
「いまどき日本語入力かよ…。で、グエンディーナ?」
――カタカタカタ……カタン!――
『BINGO!!』
「うお!! マジ!? ナイスだスフィー!!」
「え!? え!?」
自分を抱きしめてくる北川に、あたふたとした態度で応対する。
「これで長年にわたるCDの謎が解ける!!」
画面いっぱいにMediaPlayerが開かれる。
流れ始める壮大なムービー?
画面に!
『へのへのもへじ』が現れた。
三度沈黙が訪れる。
「わしは長瀬一族の偉大なる長。長瀬源之助じゃ。
スフィーよ、リアンよ。よくここまで来た!
ことわっておくが、きみたちがこれを見るころには
わしはもうこの世におらんだろう!
それからもう一つ…。
時間が無かったので顔がてきとうになってしまった。
あまり気にせんように」
――てきとうすぎだった――
「さてスフィー、リアンよ。
もしかしたらお前達も勘付いているかもれんが、この大会。
あの大魔法を使うための布石だ。
内容くらいは知っておろう。能力者の魂と心。この二つを媒介とするあの禁呪。
そして禁呪を撃つ対象。それが――神奈――
奴は………」
なにやら壮大な話が展開されているようだが、北川にはなんのことやら『はぁーサッパリサッパリ』である。
だが話は続く。
例え北川とスフィーの背中に武器が突きつけられたとしても。
「5つのCDを集めろ。それを岩山の施設で使えば禁呪が再現できる。
守りのHMもお前達の命令なら……」