発見


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「…と、いうわけで。
 わたしたちには、いくつかの選択肢が残されているの」
ぱんぱん、と手を叩き、集まってきた梓とあゆちゃん、詠美ちゃんを相手に小会議を開く。

「まず当初の目的どおり、初音と耕一さんを探すこと。
 ただこれは、今レーダーで確認する限り初音は耕一さんと一緒だし、急務ではないと思うの」
「なんだか同じ建物に、大勢出入りしているみたいだしね」
梓が付け加え、わたしも頷き返す。
街角の一室に、ここ同様の安全地帯を構築するのに成功したのだろう。

「次に残り2枚のCDを探すこと。
 ただしこれは、初期の保持者が死亡してからかなりの時間が経つので、追跡は困難だと思うわ」
「正しくはさらにもう1枚、CDがあるらしいけどね」
梓の補足が入る。

「最後に、セイカクハンテンダケを求めて、北川潤、来栖川芹香、スフィーの3名を探すことが1つ」
「ふみゅ?どういうことなの?」
繭ちゃんの豹変と、キノコの効能を説明し、彼女にも納得してもらう。

「…まあ急ぎなのは、キノコだと思うけどね。
 せっかく仲間が増えても、一緒に動けないんじゃ無意味だよね」
五人全員が銃器を携行していれば、たいていの危険は排除できる。
しかし、今の繭ちゃんを連れて歩くよりは、ここに篭っていた方が安全なのも確かだ。

「ねえ、この3人の情報更新、してみてくれないか?」
梓がHMに注文する。
「はいー。北川さん、芹香さん、スフィーさんですよね。
 この3名様は、一度二手にわかれてから、もう一回合流していますう。
 画像、出しますかー?」
「うん、そこの一番でかい画面に映してよ」
3人一緒というのは、ラッキーと言えるだろう。
ヴン、と軽いゆがみを起こした後、画像が大きく出力された。

「まあ……」
「ふみゅ?」
「うっわ…モロだ…」
「みゅー?」
「うぐぅ、痛そうだよう」

真上からの画像なので、想像でしかないのだが。
そこには、降りしきる雨の中、的確な一撃をお見舞いされる北川潤の姿が写っていた。

 犯人は来栖川あやか…いや、芹香のはず。

別荘地の中でも飛び切りのお嬢様と評判だった、来栖川芹香。
彼女がこのような挙動を示す可能性はゼロに近い、はずだ。
「ちちちっ、千鶴姉!これって!?」
「ひょっとして…!?」
2人顔を見合わせる。

 「「見つけたーーーーーーーーーー!!」」

 2人の脳裏には、あの日の禍々しい初音の叫びと、凶悪な表情が浮かんでいた。
 ゼロに等しい可能性を、当然の領域まで変換できる物体をこそ、わたし達は求めている。


【施設組、芹香の反転を確信】

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