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狂走


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──……美咲さんを奪われ、由綺や冬弥達を奪われ、みんなを奪われた。
 その僕からとうとう、初音ちゃん迄を奪おうというのかい?
 そんなことって許せるかよ……。
 ……そうだ、許せない。
 だから、耕一さんを刺した。僕は悪くない。
 もう、これ以上僕からは何も奪わせやしない。
 僕だって男だ。
 自分の意地を通すにはどうすればいいのか、そんなことも分かっている。
 耕一さん。あなたはやってはいけないことをしたんだ。
 ……もういい。もう、これ以上奪われるだけでいるのはまっぴらだ。
 奪われ続けるくらいならば、僕も……。
 僕もただ……。
 僕も奪う側にまわるだけさ……──
 
 何処で歯車が狂ってしまったのか。それは冷静な彰の思考ではなかった。
 かつて、共に戦ったときに得た信頼感はかき消えていた。
 かつて、彰が覚えた耕一への憧れは微塵も残っていなかった。
 ただ、嫌がる初音の唇を奪った悪漢に対しての憎悪。
 そして嫉妬。
 この二つの感情が、それだけが彰を走らせていた。

 ──家屋内。
 パァーッ!!
 それは、全員に武器を行き渡らせようとそれを吟味しようとしていたところだった。
 初音の胸元に僅かな光が宿ったかと思うと、
 心安まるような、透き通るような、その蒼い光は部屋一杯に広がった。
「な、なにっ?」
 慌てて襟元を広げる初音。
 その瞬間、一同を閃光が襲ったかと思うと、間もなく、その光は収束し、
僅かな燐光を残すのみとなった。
 広げられた襟元から漏れる燐光に、4人の目が注がれる。

――この間CMで見たディズニー映画みたいね……――
――ラピュタでもこういうシーンってあったわよね……――
――なに、これ? 不思議な力を感じる……――
――うおっ!! ナディアみてーだ……!――

 葉子、マナ、スフィー、そして……北川潤。
 6つの目がジットリと潤を睨み付けたが、覗かれてしまった当人には、
それ以上の関心事があった。
「これは、賢治伯父さんの形見の……」
 襟元から服の外に取り出されたそれは……。


 それは、サファイアのような蒼い石のペンダントだった
 キバのように先端の尖ったそれは半透明で。
 中には大理石のように乳白色の筋が幾つか入っている。
 耕一の父であり、柏木四姉妹の叔父に当たる柏木賢治。
 この首飾りは賢治の生前、初音がお守りとしてもらった物だった。
 それを身につけて以来、初音は大きな怪我や災厄に見舞われたことがなかった。
 初音は、今でもそれはお守りの効果だと信じている。
 もっとも、この島に連れてこられた時点で、その御利益とやらも怪しい物だが。
 まぁ、今まで死んでいないだけでも効果はあったものとして良いかも知れない。
 
「今まで、こんなことはなかったのに……」
 トーンの落ちた声で首飾りを見守る初音。
「初音ちゃん……」
 一同が初音を落ち着けようと、何か言葉をかけようとした瞬間、首飾りの先端が、
くるくると回り始めた。
「今度は何っ!?」
 驚く一同の中、初音は言いしれぬ不安におそわれていた。
──何が、何が起きているの? 嫌な予感がする。三人で此処を出ようとしたとき
 よりも、確実に嫌な何かを……──
 
 
 初音の悪い予感は、既に的中していた。

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