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望まれざる再会


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「で、その、神尾さんがいるところはまだなの?」
もう、何時間も歩き詰めの芹香はいらだった声を往人に投げる。
そのいらだちの元凶は先ほどから探知機と無制限一本勝負を繰り広げていた。
「くっ、この、くそ、なんでだ、この、これか、それとも、ここか」
探知機は往人の執拗な攻撃を受け流しているようだった。
そもそも、往人は機械の操作は苦手だ。
住所不定な旅人を職業としている(無職とも言うが)往人は、日頃から機械に接していないから、至極当然である。さすがに自動販売機を使うことやテレビを点ける程度はできるが、パソコンを使うことも、ビデオで留守録する事もできない。今どきの若者にしては珍種に分類されるであろう。

「うるせぇ! 珍種言うな!!」
往人はついに切れた。実に大人げない。
いや、だって、ほら。名簿にそう書いてあるんだもの。
そう言って、名簿を往人に見せ、そこを指で指し示した。
「どれどれ……な、ひとを、としている、ともいうが……」
お約束だ。そう心の中で私は呟いて空を見上げた。


さて、私がなぜ、このバカと一緒に歩いているかというと……。

「おい、小さい声で言っているつもりだろうが、聞こえてるぞ」
聞こえるように言ってるのに決まってんじゃない。何、当たり前なこと言ってるの?
「……どうせ、俺は普通の奴とは違う生き方だよ。テレビだってないし、ビデオだって、冷蔵庫だって、どうせ持ってないから機械音痴さ。どうせ、高校だって行ってないし、そもそも、そんなに勉強してなにが楽しいんだ。どうせ、生きてくのにたいして役に立たないこと詰め込まれるだけじゃんかよ、ぶつぶつ……」
あ、いじけた。でも、家すらないんだから、家電製品を持ってないのは当たり前じゃない。
「グサッ」
えー、バカはほっといて。なぜ、私たちはこうも、さまよってるかというと。
「しょうがねーだろ。探知機の電源入れっぱなしにしたら。あっというまに電池が切れちまったんだから」
それぐらい、少しでも考えれば分かるでしょう? 想像力のない人ね。まったく電池切れと気付かずに猿のようにカチカチと動かして……。
「……」
ああ。また、いじける。もう、話しすすまないんでシカトしていくわよ。
探知機のバッテリー切れの前に、観鈴さん(024)と(003)が一緒で、晴子さん(023)が単独行動している、ということは確認した。
名簿によると(003)は天沢郁未さん。何人かいる不可視の力の持ち主の一人。
もしかしたら、彼女たちが結界を破る鍵になるかもしれない。そう思って、往人と同行してるんだけど。
まあ、法術はショボイんだけど、反射神経とか体力とかはケダモノ並にあるから一緒にいる方が安全、っていうのもあるしね。
「ショボイ……。ケダモノ並……」
ああ、まだ落ち込んでる。まったく見かけによらず根性無いんだから。


で、まあチマチマと歩いてると。正面になんか鉄塔らしいものが見えたのよ。ただ、深い木々の隙間からなんでよく見えないんだけどね。
「なんだ。ありゃ。櫓か?」
櫓なんて古風な。
「古風って。あのな、都会の方じゃもうほとんどないが、地方だとああいう火の見櫓はまだ残ってるんだぜ」
へー、そうなんだ。さすが自由人。で、緑の帽子はかぶらないの? ギターかハーモニカは持ってないの?
「うるせえ。ハーモニカは邪道だ」
ああ、左様で御座いますか。
なんて、バカなことを言いあってると。
「ん? なんだありゃ?」
どうやら、往人がなにかを見つけたらしい。
だが、目を凝らしても何も見えない。巧妙に隠れているのか、ただ小さくて見えづらい小さい獣なのかは分からない。
少しペースを落として、注意深く進む。
そして、
「また、動いた。獣か? 人か?」
そのときの私が運が良かったのか、悪かったのかは分からなかった。
でも、私は目が合ってしまった。
そんなに近い距離ではないのに、彼もまた驚いている顔が見えたような気がした。
そこにいたのは、懐かしい顔だった。
まだ、自分が幼かった頃、何度も会った顔。そして、もう二度と会えないと思った顔。
「あの、おっさんは確か……。おい、ちょっと待てよ。あいつは!!」


この人は敵じゃない。

私は走り出していた。

だが、私は知らなかった。

彼がライフル銃を構えていることを。


【往人、芹香。フランクと遭遇】

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