合言葉は
「なぁ、千鶴姉」
梓が声をかけてきた。
「何?梓」
「繭達をここに置いていくのはいいんだけどさ、誰かここに来たらこいつら危険じゃないか?」
梓の指摘はもっともだった。
確かにこの殺人ゲームに乗った誰かがここを訪れないとも限らない。
かといって連れて歩くのはもっと危険だ。
私は少し考えてHMに声をかけた。
「この施設で鍵をかけられるような場所は無いかしら?」
「え〜とですね〜、ちょっとお待ち下さい」
そう言ってパソコンで施設内を調べ始めた。
「え〜とですね〜、ここ以外には無いみたいです〜」
「そう。それじゃあ繭ちゃん達にはここに居てもらって鍵をかけておけば大丈夫ね」
「あ、でもですね〜」
「何?」
「ここのロックはパスコード式になってますからパスコードを設定しないといけないんです〜」
「パスコード?」
「はい〜、キーワード入力式か応答式でパスコードを設定できます」
「そんなのなんか適当に決めればいいじゃないか、千鶴姉」
「ダメよ。簡単に分かるようなパスコードだと意味がないでしょ」
「う〜ん………、でもさぁ、あんまりややこしいのだとこいつらが外に出たときに困らないか?」
「あら?外に出ることがあるかしら?」
「確かここトイレ無かったはずだけど」
「そうなの?」
私の質問にぽややんとした雰囲気のHMが答えた。
「はい〜」
「そう、それは困ったわね………」
簡単なパスコードだと他の人にすぐに分かってしまうから意味がない。
かといってあまりにも難しいのだとこの子達は間違いなく覚えきれないだろう。
「何か良い言葉はないかしらね」
「う〜ん………」
私と梓がそろって頭をひねっていると私達の頭を悩ませている張本人が近づいてきた。
「ふみゅ〜ん、どうしたのよ〜」
「………いいよな、お前は。気楽そうで」
「なによ〜、したぼくのくせになまいき〜!」
「げぼくだっての。それにあたしはあんたの下僕になった覚えは無いんだけどね」
二人が言い争っているのをため息をつきながら見ていると詠美ちゃんが一枚の紙を落とした。
詠美ちゃんはそれに気付いた様子は無かった。
私はそれを拾い上げてみた。何か文字が書いてあるようだ。
「かゆ………うま?」
「ふみゅ?」
「千鶴姉、ボケたか?」
私は梓を一睨みすると詠美ちゃんにこのメモ書きの事を聞いてみた。
何でもどこかの施設を襲撃したときに兵士の死体からパクッてきたものらしい。
「千鶴姉、こりゃ単なる落書きだろ」
「そうね、でもちょうどいいわ。これをパスコードにしましょう」
「ハァ?!」
「こんな言葉普通は思いつかないでしょ。第一覚えやすいし」
「まぁ、確かにんな言葉普通は考えつかないよな。それにこれ位ならこいつらも覚えられるだろ」
「ふみゅ〜ん!ばかにして〜!」
「それじゃあお願いできるかしら」
私はまた言い争いを始めた二人をほっといてぽややんとしたHMに頼んだ。
「はい〜」
「そうね。『かゆ』と表示された後に『うま』って入れたらいいようにしてくれるかしら?」
「はい〜、お任せ下さい」
「それじゃ、お願いね」
私はHMにそう頼むと後ろで騒いでいる二人を止めに行った。
【マザーコンピュータルームのパスコードを設定】