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嵐のあと


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高さと広さと、迫力に。
思わず目を瞠り、大きく息を吸い込む。

何処を向いても、視界の全ては青と白に埋め尽くされて。
見上げれば吸い込まれそうな空。そして雲。
見下ろせば目が眩むほどに深みのある海。そして波。
それ以外に感じられるのは、潮の香りと、風の音だけだった。


…あら、お久しぶり。
乙女の七瀬よ。元気にしているかしら?

あたし達は、ついに島の最北端まで到達したのよ。
ちょっと早いと思うかもしれないけれど、急がないと、何故だかあたし達の美しい顔が
みるみる破壊されていくの。
それは言うなれば、世界全体にとっての損失なのよ。

「…ねえ、晴香」
「ん…なあに?」
ようやくたどり着いたそこは、数十メートルの断崖。
ただ静かに、切り立つ崖の上から、青と白の世界に囲まれて立ち尽くしていたけれど、
二人で腰に手を当てて仁王立ちしている姿は、いかにもスポコンものそのまんまで、
我ながら乙女離れしたたたずまいだったわね。
夕日じゃなくて良かったわ、なんて思いながら、誰に見られているわけでもないけれど
慌てて姿勢を崩し、晴香に声をかけてみたの。

「す、凄いわね」
「そりゃ、さっきまで大荒れだったからね」
確かに突然晴れたからと言っても、海が平穏を取り戻すのには少々時間がかかる。
真下を見れば、自殺名所のように見えなくもないほどの波飛沫が舞っていたわ。
断崖絶壁に、数メートルの大波がうち寄せているのは、ちょっとしたもんなのよ。

「空はもう、こんなに穏やかなのにね」
「この時期アラシは憑き物だから、仕方ないわ」
(…なんか発音が変な気がするけれど、多分気のせいよね?)
そう自分に言い聞かせて、水面を見つめる。
波に紛れてはっきりとは判らないが、一部分だけ青色が濃く、底が深くなっている…
…つまり穴が開いている感じが、する。

「晴香、あそこ…深くない?」
「七瀬……飛び降りは、一人でやってよね」

 シャキン!
        ガキン!

「何でアタシが飛び降りなきゃなんないのよ!」
「じょじょ、冗談よ!アンタの刀は毒塗ってあるんだから、やたらと抜かないで!」
「だったら煽るんじゃないわよっ!」
(まったく、折原と同じくらいバカだわコイツ。煽りは常に、厳禁なのよ?)
そう思いながらアタシは、真後ろにそびえ立つ灯台へと向かった。
歩きながら考える。
(…そうだ、最初に床を調べてみよう)
もしも海底に繋がっているのなら、きっと地下への入り口があるはずだから。

穴の大きさから考えると、思った以上に小さな潜水艦なのかもしれないけれど。
例え一人だけでも脱出できるなら、きっと助けを呼べるのだから構わない。

 願わくば、この白く巨大な塔が。
 あたし達の、希望になりますように。



【七瀬留美 巳間晴香 灯台に到着】

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