献身的な手当て
晴子はあせっていた、消毒液が見つからないのだ。
「くそ、いったいどこにあるんや!」
今の耕一の状態はかなり危険である。
晴子も運んでいる時、喫茶店に着くまでに死ぬのではないか、という危惧がまとわりついて離れなかった。
だから喫茶店まで連れてくると、耕一を寝かすと、すぐに手当てをするために救急箱を探した。
見つかることには見つかったが必要な物が一つ欠けていた、それが消毒液である。
「消毒の一つぐらい残しとき!ケチは嫌いや」
誰に言うわけでもなく、晴子は愚痴をこぼした。
しかし、くまなく店の中を捜したがついに消毒液は見つからなかった。
途方に暮れかけた時、晴子は代用品の存在を思い出した。
耕一の意識は朦朧としていた。
目の前の人らしき物は誰でなにをやっているのか、自分が何故こんな所にいるのかもわからなかった。
ただ頭の中では思考が渦巻いていた、それは自分のことではなく他人のこと。
(みんな大丈夫かな…)
けれども考えがまとまらない、なんだか夢の中にいるみたいだった。
次の瞬間、体に激痛が走り、急に意識が覚醒した。
「ぅぎいいあぅあぁぁあ!!!」
耕一は叫び、周りを見回した。
そこには
「勿体無いから飲んどこか」
とか言って一升瓶をラッパ飲みしている女がいた。
【耕一 状態はまだまだ危険】