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-- Kizuna --


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(今やもう、あと一歩の所まできた!!)
 よもや初音が彰に発砲するとは思わなかったが、それ以外はほぼ、鬼の思惑通りに
事は進みつつあった。
 彰の理性はもはやガタガタで、あと一歩踏み出してさえしまえば、粉微塵に散るだろう。
(その時こそ、己が完全なる自由を手に入れるときだ。
 さぁ、彰よ、早く! 早く自分を裏切った醜い雌をその手に掛けるのだ! 俺がこれ以上
 力を傾けなくても、もうそれぐらいのことは自分の意志で出来るよなぁ?)

 右腕を左手で押さえるようにして構えた銃を、初音に向けて彰は立ちつくしていた。
(僕は初音ちゃんを撃つ。撃ち殺す。何故なら彼女が僕を裏切ったからだ……。
 何もかもを失って、唯一残されたものにまで。その彼女にまで裏切られたら、
 許せるはずがない。だから、僕は。
 ……初音ちゃんを殺す!)

(『また』撃ってしまった。いや、『今度こそ』撃ってしまった。千鶴お姉ちゃんの
 時とは違う。私は、私の意志で彰お兄ちゃんを……) 
 震える手で拳銃を握ったまま、初音もまた立ちつくしていた。
(私は、彰お兄ちゃんを殺す。殺さなければならない。そして私も……)

 そして、物陰では。
 二人の女がそれぞれの場所でそれぞれの武器を手に、息を潜めていた。
 
(私は本当にこのままで良いのでしょうか? 自分が命を懸けて救った命が、
 目の前でお互いを殺そうとしているなんて。こんな事が認められるのでしょうか?
 初音ちゃんの真剣な訴えに気圧されて、一度は身を隠してしまったけれど、
 本当に良いの? 私は!? )

(初音ちゃんが……本当に撃った!? あの優しい娘が自分の愛する人を……。
 こんなのって、ないよ。愛する人を自分の手で殺すなんて。
 何とか、何とか良い方法を……。でも、いい方法なんて考えられない!!
 聖さん。わたし、わたし……!!)
 
「初音ちゃんが僕を受け入れてくれないのなら!! 君を殺して僕も死ぬ!!」
(何!? それは違うぞ、彰!! それは断じて否だ!! 認められない!!)
 初音の瞳から、涙がこぼれ落ちる。
(何でこうなっちゃったのかな……。エディフェルは上手くいったのに……。でも、
 私、彰お兄ちゃんとなら……)
 
 初音に向けられたままの銃。
 引き金にかかった彰の指に、僅かずつ力が入ってゆく。
(本当にこれで良いのか、僕は……!?)
 彰のどこかには迷いがあった。
 まっすぐに自分を見つめる初音。
 悲しいまでに済んだ初音の瞳に吸い込まれそうになる。
 しかし、彼女の手には銃があり、それが彰に向けられているという現実……。
 
 その時、どれが最初に起こったのか、分かった者はいなかっただろう。
 それらは本当に、ほぼ同時に起こったのだ。
 
「こんなこと、認められません!!」
「こんなの駄目ーッ!!」
 各々叫んで飛び出した、葉子とマナ。
 急激に光を取り戻した初音のペンダント。
 そして、銃声。
 ……均衡は破れた。

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