スタートライン
パスコードの設定はさっきのぽややんとしたHMがやってくれた。
HMにはCDの解析の続きも任せてある。
護身用に武器も残してあるがとにかくいざとなったら逃げるように詠美ちゃんには言い含めてある。
詠美ちゃんなら今の繭ちゃんのことをちゃんと守ってくれるはずだ。
ようやく出発の準備が全て終わった。
「梓、そろそろ行くわよ」
「あいよ、千鶴姉」
私は梓にそう言うとあゆちゃんに話しかけた。
「あゆちゃん、本当に私達と一緒に来る気なの?」
「うん。お願いだよ。ボクも連れていって」
あゆちゃんの目には確かな決意の色が見えた。
「仕方ないわね、それじゃあ一緒に行きましょう」
「ち、千鶴姉!?」
「梓。多分あゆちゃんは一人でも行く気よ。それならまだ私達と一緒に行動した方が安心でしょう」
「でもさ」
「お願いだよ。梓さん。ボクも一緒に連れていって」
あゆちゃんのそのまっすぐなまなざしに梓も折れたようだ。
「じゃあ、詠美ちゃん、後のことよろしく頼むわね」
動物達と戯れている繭ちゃんの方を見ながら詠美ちゃんに言った。
「だいじょーぶ!このくぃーんにまかせて!」
私達は詠美ちゃん達をその部屋に残すと施設の外へと向かった。
外に出ると私は手元のレーダーを見た。
そこにはハンテンダケを持っていると思われる芹香さんの居場所が示されている。
私はこのレーダーの持ち主だった人の事を思い返した。
私と秋子さんは思えばかなり似かよっていた。
私達の根底に流れる物に違いはほとんど無かったはずだ。ほんの少しの違いが今の私と秋子さんの違い。
秋子さんは私をこの世界に引き戻してくれた。
私は秋子さんを引き戻せなかった。
それでもお互いが目指していた方向は同じだった。
だから私もこれからも自分が正しいと思う道を進もうと思う。
家族を、守りたいと思える人を守っていく。その為なら私がどうなろうとも構わない。
私は最後まで足掻き続ける。
それは秋子さんへと放った言葉。
それは私の誓い。
私は改めてそのことをここで誓う。
それが秋子さんへの、同胞への餞となると思うから。
あたし達はようやく外に出てきた。
何か一ヶ月くらい中にいたような気がする。
横では千鶴姉がレーダーを見ながら考え事をしてる。
どうせ、また何か一人で抱え込んでいるんだろうな。
千鶴姉はいつもそうだ。
でも、あたし達は家族なんだぜ。
千鶴姉があたし達のことを大切に思ってるようにあたしだって千鶴姉のことを大切に思ってる。
だからあたしはこれからも千鶴姉の事を支えていきたい。
千鶴姉はこれからも何も話さないで一人で何でも抱え込むんだろうな。
だったらあたしも千鶴姉のことをずっと支えてやるよ。
でも、こんなことは絶対に千鶴姉には言えないけどな。
そんなこと言ったら千鶴姉は「そんなことしなくていい」って言うに決まってる。
だから、これは密かにたてたあたしの誓い
雨はすっかりやんでいた。
やっぱりさっきボクが感じた何かが原因なのかな。
何か分からないけど、ボク、そこに行かないといけないような気がするんだ。
ボクは建物の方を振り返った。
ポケットの中から一粒の種を取り出す。
それはおじさんがボクに残してくれた物。
でも、ボクはおじさんからもう一つ大事な物をもらったんだよ。
ボク、おじさんの気持ちもちゃんとあの時受け取ったから。
おじさんが言ってた通りにちゃんと生き残るから。
今までボクのこと守ってくれてありがとう。
ボク、頑張るからね。
おじさんがいなくてもちゃんとやっていくよ。
だから見守っててね、おじさん。
「それじゃ、行きましょうか」
−−−彼女たちの胸に秘められた3つの思い−−−
「ああ」
−−−その決意を胸に彼女たちは再び歩き出す−−−
「うん」
−−−この場所が3人の新たなスタートライン−−−
【千鶴 あゆ 梓 ハンテンダケ捜索に出発】
【繭 詠美 ぽち ぴろ そら 施設に残留】
【千鶴 鉄の爪(左) 防弾チョッキスクールタイプ Cz75初期型 人物探知機 所持】
【梓 防弾チョッキメイドタイプ H&K
SMG2二丁 所持】
【あゆ ポイズンナイフ×2 イングラムM11 種 所持】
【施設残留組 無印CD CD3/4 CD4/4 体内爆弾爆破光線銃 ネコミミヘアバンド
S&W M10 エアーウォーターガンカスタム ステアーTMP マイク ダイナマイト一本】