contradiction


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「よっしゃ!これでどうだ!」
G.N.が声をあげた。
するとメインモニターには「029 北川潤」という文字と
一人の少年が制服にカレーの汁を飛び散らせながらカレーうどんをすすっている写真が写し出された。
「どうだ!参ったか!ワシにかかればこの程度のこと朝飯前よ!」
コンピュータから自慢げな声が漏れる。
「こいつがCDをもってるわけ?」
「ああ、残りの三枚全部この坊主が持ってるみたいだな」
「ふ〜ん、そうなんだ。じゃあそのひとをさがせばいいわけね」
「お嬢、『ありがとう、Gちゃん。あなたは素晴らしいわ!』位言えないのか。人が折角やってやったのに」
「ふみゅ〜ん!なんでわたしがそんなこといわなきゃいけないのよ〜!」
「まぁ、それは冗談だけどな。あ、そうそう。お嬢ちゃん」
「なによ〜」
「ワシが起動する前に何か知らないが参加者が島中に向けて放送をしてたけどそのこと知ってるか?」
「なんのこと?」
「あらら、やっぱり聞いてなかったか。ま、ワシの記録データに残ってるから聞かせてあげようではないか」
「いいわよ、べつに」
「遠慮するなって。う〜ん、やっぱりワシはいい人だねぇ」
「だからいいっていってるでしょ〜!」
「それではスタート!」


『―――――――――――――――――
 心当たりのある者は、是非とも名乗り出て欲しい。
 その知識と、能力に期待する!』

「うわぁ!すごい!これでわたしたちかえれるんだ〜!」
放送を聞き終わった詠美は興奮した口調でそう言った。
「………おいおい、お嬢。それ、本気で言ってるのか?」
G.N.が呆れたような声を出した。
「なにいってるのよ、いまのきいたでしょ!」
「あ〜、お嬢。君はあの放送が何かの罠だとかそう言う考えは持たなかったのか?」
「へ?」
「ハァ〜やれやれ………」
「な、なによ〜!」
「この島で3日も生き残ってるなら普通はそう言う考えに行き着くと思うぞ」
「ふ、ふみゅ〜ん………」
「お嬢。一言だけ忠告しておくが、そういう甘い考えは捨てないと間違いなく死ぬぞ」
「で、でも!」
「現にこの放送をした場所に3人いたんだがそのうち2人はもう死んでるぞ」
「………」
「殺したのは残った一人のようだしあの放送で出てきた奴を殺すつもりなんだろうな」
そこで一旦言葉を止めた。
詠美は言い負かされたのが悔しいのか既に涙目になっている。
「この島はそういう島なんだよ、お嬢。生き残りたかったら他の奴を殺すのが手っ取り早いしな」
「どうしてそういうこというのよ!」
「どうしてと言われてもなぁ。ワシが何か間違ったこと言ったか?」
「ふみゅ〜ん」
「ほれ、ワシとそこのロボットはCDの解析をしなきゃならんから。お嬢はあっちの子供の所にでも行ってきなさい」
子供をあしらうような口調でG.N.がそう告げた。

「ふみゅ〜ん!むかつく〜!」
「みゅ〜!」
「にゃ〜………(いっそ殺してくれ………)」
「なによあいつ〜!ちょっとあたまいいからってなまいき〜!」
「みゅ〜?」
「ばっさばっさ(ぽち君、何かあの子僕たちの方を見てるんだが)」
「しゃ〜、しゃ〜(逃げた方が良さそうね、あいつみたいになりたくないし)」
「ばっさばっさ(賛成だな)」
「やっぱりコンピュータににんげんのきもちなんかわかんないのね」
「みゅ〜♪」
「あ〜!むかつく〜!!!!」

「お〜い、とっとと始めるぞ」
ワシはCDの解析を始めようとロボットに声をかけた。
「あ、あのですね」
「ん?何だ?」
「どうしてあんな事言ったんですか?詠美さんが可哀想ですぅ」
「ワシは事実を言ったまでだぞ」
「でも………」
ロボットは、まだ何かを言いたそうな様子だった。
「お前さんもロボットらしからぬ考えを持ってるのう。そう言えばHMX−12には感情があるらしいな、その影響か?」
「わ、分からないですぅ。スミマセン〜」
「ま、そんなことはどうでもいい。とっととCD解析始めるぞ」
「は、はい〜」
「んじゃまずお前さんが解析した分のデータをよこせ」
「分かりました〜」

あ〜、そろそろ放送の準備も始めにゃならんなぁ。
同時進行で進めておくかな。

………にしてもワシも何であの嬢ちゃんにあんなこと言ったのかね。
プログラムされたこのゲームを取り仕切る、という任務からすれば
ああ言う忠告を参加者にするのはよろしくない、と論理的に出てるんだがなぁ。
前に起動したときにはこういう思考矛盾は出なかったはずだけど、おかしいな。
何ぞバグでもあるのかねぇ。
後から調べてみるかね。

【CD解析開始】
【G.N. 放送準備開始】

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