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糸口


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「我々は手を組んで立ち上がるべきなのだ!!
 我が意に賛同する者は、学校に集って欲しい。
 そして我らが希望に反する者どもよ、決着をつけようじゃないか!! 」

島の最北にある灯台。その、最深部の管制室に人影が二つあった。
「蝉丸さんだね……」
手近にある椅子に腰掛けながら七瀬は呟く。
その言葉に晴香は無言で頷く。

『学校は、市街地南部に広がる山の東側にある!
 街から山を見て、その左だ。
 繰り返す。学校は市街地の南にある山の東だ!!』

「学校? そんなもんがこの島にあるの?」
同じく適当に座った晴香が七瀬に尋ねる。
「あ、うん。まあ。私、行ったことがあるけど……」
そう言って、七瀬は曖昧に微笑む。
晴香はその表情と言葉のニュアンスから触れられたくない話題だと察し、それ以上突っ込んだ話しは聞かなかった。
(死体を見て悲鳴を上げるとき『ギャー』はないわよね。乙女として……)


『恐らく既に知らぬものはいないだろうが、我々の中には多くの異能者が存在する。
中でも現在求められているのは“魔法使い”だ!
心当たりのある者は、是非とも名乗り出て欲しい。
その知識と、能力に期待する!』

「異能者と魔法使いねぇ……。そういえば、一応、晴香も異能者なんだよね?」
「一応って、まあ不本意ながらね……」
晴香がFARGOに入信したのは兄を捜すためであり、『不可視の力』を求めてではなかった。
『不可視の力』は兄が失踪する原因の一端を担っている。それなのに、自分が使えるようになったことは運命とは皮肉なものだと彼女は思っている。

「あんただって、なんか特殊な力があるんでしょ?」
晴香のその言葉に七瀬は大きく首を横に振る。
「まっさかー。私は普通の女子高生よ」
(普通の女子高生が鉄パイプやポン刀をブンブン振り回すの……)
晴香はジト目で七瀬を見ながら、彼女の『普通』という言葉を信じないことに決めた。


放送が終わり、二人は改めて管制室を調べた。
いくつものモニター、いくつもの端末。
そして、数多くあるスイッチ類。
コンピュータ関係に疎い二人は無闇に端末に触ることはせずに、まずはスイッチに書いてある文字を読んでこの施設の特性を把握しようとした。
「こんなことだったら北川を連れてくるんだったわ。あいつコンピュータに強いし……」
「Emergency Call? 非常ボタンみたいなものね」
もっとも、それらは欧文で書かれているために、簡単な英語で書かれているものしか解読できなかったが。
「ちょっ、ちょっと七瀬、来て」
部屋のはじのほうにある端末を調べていた晴香が興奮した声で手招きをする。
「なに?」
そして、晴香が指さしたボタンは他のものと違い、プラスチックの封で覆われていた。
簡単に使えないように、封を割らなければ押せないようになっている。それだけ重要なボタンだということだ。
「ふえー、なに、このボタン。さーふぇいす、とぅ、えあー?」
「Surface-to-air 日本語に訳すと地対空」
七瀬はその意味を察し、ギョッとする。
「えっ! だとすると、これ……」
「そう、ミサイルよ」


二人はしばし言葉がなかった。
いくつもの銃器や数多くの管理者の兵隊を見たが、まさかこんなものがあったとは……。
このプログラムは本当にただの金持ちの道楽なのだろうか?
そんな事が彼女たちの頭に浮かんだが、真相を予測することはまず不可能であろう。
「これで、脱出の手段が一つ増えたわね」
晴香の言葉に七瀬は首を傾げる。
「どうやって? まさか、あれに乗っていくとか言わないでしょうね?」
その的外れの言葉に晴香は『ふう、やれやれだぜ』、と言わんばかりに肩をすくめる。
「なに、頭、あったかいこと言ってるの? そんなわけないじゃない!」
「じゃあ、どうるのよ」
くちびるを尖らせて七瀬は反論する。
「いい? この島がどこにあるか知らないけど。地球上にあるのは間違いないわね」
「当たり前じゃない」
「じゃあ、どこの国とも分からないミサイルが発射されたら、今の地球ではどうなる?」
「そりゃ、近くの国か、某大国が調べに……そうか!」
「そう、地面にHELPかS.O.S.を大きく書けば、救助が来る」
出来の悪い生徒がようやく解答を導き出したことに、晴香は満足そうに頷いた。


思いがけず別の脱出法を二人は見つけた。
だが、脱出の選択肢は多いにこしたことがないので、さらに探索する事を決めた。
そして、通路を先に進む。
管制室に人がいなかったからこの施設は無人化もしれない。
だが、慎重に彼女らは懐中電灯をつけず、警戒して歩いていく。
「なんかジメジメしてきたわね」
「この先かしら、潜水艦は」
「そうね」
そう小声で二人は話し合う。
初期の目的である潜水艦を見つけることが出来そうなので二人の足取りは軽い。
やがて、潮の香りがにおい始め、狭い通路が終わった先には岩場をくりぬいた天然の港があった。
そして、そこに一隻だけ係留されていたのは、
「あ、あれ?」
「なに、あのへちょいの!?」
長さが二十メートルにも満たない丸く小さな潜水艇だった。

意気消沈する二人だったが、せっかくここまで来たのだから、と調べてみることにした。
「なんだか、三人か詰めて四、五人ぐらいまでしか乗れないわね」
「でも、そんなに乗って空気は保つの?」
上部にあるハッチを開けると見かけ以上に艇内は狭かった。本来は二人乗り用なのだろう。
「えっと、動かすのはどうすんだろ……」
「ちょっと、あんた。適当にスイッチを押さないでよね」
七瀬は操縦席を見渡したが、車の免許すら持っていないので、もちろん動かし方など分かるはずもない。
「分かってるわよ。ちょっと見てるだけだってば。って晴香押さないでよ」
「狭いんだからしょうがないじゃない」
「しょうがないって言っても……きゃ!」
晴香に押され、七瀬は操縦席の右側にある黒いパネルを押した。
すると、

「指紋、照合できませんでした。お手を拭きになって、もう一度お願いします」

と、艇内のスピーカーから無味乾燥な音声が聞こえた。
「出るわよ、七瀬」
「えっ、うん」
その合成音声の意味を瞬時に理解した晴香はため息をつき、艇外に出ていった。

いままでの通路をたどり、二人は灯台の入り口に戻ってきた。
もちろん、地下への入り口は開けたままである。
「ま、かなりの収穫はあったわね」
二人は久々に浴びた陽光の下で大きく伸びをする。
「そうね。でも晴香。あいつ言うことが大げさだったね。潜水艦って言うからみんなが乗れるぐらいのものかと思ったのに」
「まあ、あいつは物事を大きく言うのが好きそうだし。まあ、小人にありがちね」
そう言って、晴香は歩き出し七瀬も続く。
二人は別の所にある潜水艦ELPODの存在を知らない。
「それに、あの船動かせないし……やっぱりミサイル撃つしかないのかな」
「でも、あれを動かす手はあるにはあるんだけど……」
「手って。どんな手?」
七瀬が身を乗り出して聞く。
「手を持ってくる手」
「はあ?」
「あれのキーロックをはずせそうな人の手を持ってくるのよ」
「げ!」


そして、二人は脱出についてあれこれ話しながら、事の成果を皆に話そうと学校へと向かった。
呼び出した本人が、既にこの世にいないことも知らずに。


【069七瀬留美 毒刀、手榴弾三個、志保ちゃんレーダー、レーザーポインター、瑞佳のリボン、ナイフ所持】
【092巳間晴香 日本刀、ワルサーP38所持】

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