開明。
CDの解析も終了したわけであり、わし、グレート長瀬はモニターを眺めながらぼやく暇もある。
今まで後ろで遊んでいた二人――大庭詠美も椎名繭もその光点の動きに注目している。
自分の背後でじっとその様子を見つめている様子は、今までにない真剣さだった。
「そろそろ、放送じゃな」
時計を見てわしは呟いた。
長瀬の管理者が他には残っていないわけだから、自分が放送を入れる役目をするのは当然だろう。
今度の放送での死者は相当少ない。
「坂神蝉丸、三井寺月代、柏木初音――それに、来栖川芹香、んで……って」
死んでる! 後ろの二人は死んでいる!
馬鹿な! ――この基地内の光点はこのモニターには映らない。
盲点だった――……何故、何故だ?
わしの天才的なデータを駆使して考える。
くっ……なんて事だっ。まさか幽霊? 馬鹿な、有りえん!
だが、魔法が存在する世の中に幽霊の一人や二人いた所で何も変わらんだろうとは思うのだが……
わしの柔軟な頭はそこで理解した。
……幽霊さん、だったのじゃな。二人とも、この島で死んでしまった可哀想な子供達だったのじゃ。
そうとも知らずわしは邪険に扱ってしまった。
うう、すまん、詠美に繭。不甲斐ない爺ちゃんを赦しておくれ。
わしはどうしようもなく悲しい気持ちになった。
「ふみゅ?」
「みゅう」
訝しげな目で見る二人。みなまで云うな、爺ちゃんは判っとるよ。うう。
ともかくわしは、死亡放送を掛ける事にした。
出来る限り真剣な声で。
「それでは午後六時の定時放送を始める。死亡者は――四人。生き残りは後十三名だ。
021柏木初音 037来栖川芹香 040坂神蝉丸 083三井寺月代」
簡潔に終えた。
生き残りの中には、当然彼女らは含まれていない。
敢えてわしは、生き残りの人間を放送するのは止めた。それは彼女らにとってあまりに残酷じゃ――
少ないとは云え――それでも殺し合いはまだ続いているのじゃな。
わしは小さく息を吐いて、ぼう、とモニターを眺めていた。
「ふみゅ、誰か来たよっ」
その瞬間、詠美がそんな声をあげた。ぼうとしていたわしはその声で漸く現状に気付く。
「誰か――来たようだの。――029番か」
わしは、その近付いている光点――北川潤の光を見つめながら、もう一度息を吐いた。
【七瀬留美 巳間晴香
――――――手首回収の後、学校に向かう】
【北川潤 来栖川芹香 ――――――CDと共に施設へ向かう】
【G.N 椎名繭 大庭詠美 ――――――施設待機、放送終了後北川の到着を確認】