扉の向こう側
「確か、ここだったな」
木々の間から呟きながら男が一人歩いてくる。
歩を進めるその先には一件の民家が建っている。
男の名前はフランク長瀬、以前はこのゲームの
管理者の内の一人だったが今はただの参加者である。
俺の記憶が正しければ、ここに月島瑠璃子そして
太田香奈子この二人の少女の死体が転がっているはずだ。
高槻がこのゲームのジョーカーとして選んでいた月島瑠璃子
……こんなことなら島に送り込む前に犯ってしまっておけば
良かった。
誰も居ない。誰かを住まわせるつもりで作ったわけではない
人のぬくもりがまったく感じられない家の中を死体を捜して
徘徊している。……つくづく狂ってるな俺も。
狂ってるそう思える人間は狂ってなどいない。何かの本で
……確か、彰が持ってきた本に書いてあったな。
クク、結局デマだったわけか。俺はこうして狂ってる。
家の中のある一室を覗き込むと重なり合うように転がっている
死体が二つ。
どうやら目的の“物”に辿り着いたようだ。
月島瑠璃子の上に重なって転がっている太田香奈子だったものを
乱暴に蹴り上げて月島瑠璃子の上から落とした。
両の眼窩と額、胸に五寸釘を刺された月島瑠璃子の死体が現れる。
少女の死体を跨いで見下ろす。
この島に来る前は祐介の恋人だった少女。長瀬瑠璃子になっていた
かもしれない少女。……その少女に俺は何をしようとしてるんだ。
一瞬そんなことが思い浮かんだ。
だが、見下ろしていた自分の目は少女以外のものを捉えていた。
……勃起している。
口で右手で押さえるが溢れ出る笑いを止める事はできない。
笑いが家中を支配する。
そうさ、何を思い悩む?あの祐介を殺した少年を殺せる力さえ
手に入れればいいんだ。頭よりからだの方がよく分かっている。
つくづく狂ってるな……俺も。
ズボンから勃起した自分のモノを取り出す。
目の前の五寸釘が気になり、可愛い顔が台無しじゃないか。
微笑みながら少し浮いている五寸釘を完全に押し込む。
腰を押し進めようとするが進まない。
死後硬直でもう完全に固まっているのだから当然だ。
「これじゃあ入らないじゃないか、いけない子だ。」
腰に差しておいたナイフを取り出して月島瑠璃子の陰部に突き立てる。
……これで入りやすくなった。ほくそ笑む。
ナイフであけた穴に勃起した自分のモノを突き立てる。
突き立てるたびに、固まった血を突き立てることになり自分のモノが
どす黒く塗りたてられていく。
電波とは月島瑠璃子と交わることで彼女の持つ狂気が伝染して得られる
能力。彼女の狂気の心が相手の狂気の心を目覚めさせるのだ。
つまり、彼女が生きていなければ意味がない。
自らの射精により、行為を終えたフランク長瀬だったが今の彼に
電波を得たかどうか理解する事など出来るはずがなかった。
頭がちりちりする。ずきずきする。……これが電波を得るということか。
「これで、これで俺は電波を!祐介の仇をとることができる力を手に入れる
ことができたんだ!
まずは……まずはメインディッシュの少年以外の連中を消してやる。
あいつ等がすぐに全員死んでいれば祐介は島を出ることができたんだからな」
頭の痛みが精神を失調した彼の幻想だと気付かずに
狂気を宿し、狂気を力の源にする能力を手に入れるために行動した男は
能力を宿すことなく自身の狂気をより深め、長瀬祐介の弔いのために動き出した。