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ココロ、ウバワレテ(後編)


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「ま、待ってください・・」
――ああ、苦しい、
 腹と足が、焼けるように熱い。
 少し言葉を喋るにも、地獄の苦しみを味わってしまう。
 でも、言わなければ、私の命のは、もう幾分もないのだから。
「黙って寝てれば楽に死ねたんだぞ・・」
 目覚める事のないだろうと思っていた葉子の覚醒に往人はシグ・ザウェルを構えながら、
 彼女に声を掛けた。
「あ、貴方にた、頼みがあるんです」
 今にも消え入りそうな声で葉子が話す。
「悪いが・・時間がない。連れの二人を助けに行かなければいけないんでな」
「ほ、ほんの少しでいいんです、お願いし、ます」
 彼女の必死の言葉に、往人は溜息をつきながら、
「30秒だ、それ以上は待てない」
「充分です、あ、ありがとうございます」
 喋るたびに、葉子の口から血が吹きだす。もう、長くないだろう。
「し、信じられないかもしれませんが、さっきまでの私は私ではありませんでした、私を操っていたのは、このゲームに巣食っている、真の、敵です」

 ここで一度言葉を飲み込みながら続きを話す。
「そ、その敵は、あの人は『姫君』と呼んでいましたが、あの人もまた、姫君に心を奪われ、人格が消されているのです。恐らくは、郁未さんも」
 意識が遠くなっていく、ま、まだ眠っては駄目・・。
「そして、お願いというのは、姫君を・・こ、殺してください
 い、今の私の自我が戻ったのは、別の意思、つ、つまり姫君の意思を貴方が殺したからです。ひ、姫君に侵食されている時に、その侵食先にダメージを与えると、
 どうやら、姫君本人にもダ、ダメージが行くようです」
人格が戻った時に、一度聞いた姫君の叫びが聞こえた上での勝手な憶測ですが、と話しを付け加える。
「乱暴な言い方ですが・・侵食された人間・・い、郁未さんや他の参加者がそうなった時に貴方がその人を倒していけば、いつかは・・・」
「もういい、それ以上しゃべ・・・」
 ガン!ガン!
 音が、森に響き渡る、銃声だ。
「しまった!始まったか!悪いがもう聞けん!」

 そう言うと往人は葉子の方を振り返ることなく、銃声が聞こえた方に走っていった。

(行って・・しまいましたか・・・)
 随分とあたふたした説明になってしまったが、恐らくあの男なら、自分の言わんとしていたことを解ってくれているだろう。
(そう、信じましょう・・・)
 体から、力が抜けていく。
(なんだか・・眠いです・・、後は・・・あの人に任せましょう・・・)
 自我を奪われ、罪もない参加者を傷つけてしまった女の最後にしては、悪くない。
 そう思い、満足しながら、
 彼女は眠った、永遠に。

 
【鹿沼葉子 死亡】

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