One way
姿を確認すると同じに、銃を構え直す暇もなく、
「ぐぁぅっ!」
銃弾が、郁未の身体を貫いた。
焼けるような痛みと共にその場に倒れ伏す。散弾銃は落としてしまい、そして拾い直す力すら残されてはいなかった。視界が滲んでいく。傷口から意識が拡散していく。死んでしまうのはわかっていたけれど、それでも意識の欠片を拾い集めていた。
死んでしまう方がずっと楽であるはずなのに。
「郁未さん!」
「動くなっ、観鈴っ!」
郁未に駆け寄ろうとする観鈴に、叫ぶ。観鈴はびくっと体を震わせて、その場に凍りついた。
「こいつは晴子を殺した。お前は強い子だから撃てなかったが、俺にはそんな強さはない」
辛うじて残る意識の中で、郁未は往人の言葉を聞いていた。
『撃たない強さ』それも持っていないものの一つだと。
「……わかるな、観鈴」
何も答えない。涙だけが流れるが、反論はできない。往人の気持ちは、痛いほどわかっていた。我慢する強さも持っている。それは、ある意味では悲しい強さだったのかもしれない。
「どの道お前は殺さなければいけないらしい。『姫君』とやらに侵食されている人間を殺すことが、『姫君』を弱らせることに繋がるらしいからな。信じてやってもいいと思ってる」
「……誰、から……」
やっとのことで声が出る。
「もう一人の女からだ。最後に自分を取り戻せたみたいだぞ」
「……そう、なんだ。よかった……。
一つ言っておく、けど……私は操られていない。
自分の意志で、彼に……」
「だったら、それがお前の間違いだ」
「間違ってなんか、いない……」
そこで、涙があふれた。
「私は……彼を愛していたから……」
どんなに清々しい涙だったことだろう。
「観鈴、目を閉じてろ」
事実上の死刑宣告。
最後の最後に、彼の傍らにいてやれなかったことが、
ダンッ!
心残りだった。
自分は絶対に、道、を間違えてはいなかったと、自信を持って言える。
何故なら、道は自分の歩いてきた後に出来るものだからだ。
その時その時に、悩んで、考えて、そしてたまには考えることもやめて。
そうして続いてきた道に、例え他人が何を思おうとも、私が満足すればそれでいい。
人を、殺した。
人を、傷つけた。
後悔がないわけではないけれど。
あの時別の選択肢を選べばよかったと思うことはあるけど。
最後に辿り着いたこの場所に満足できれば、全て許される。
最後まで彼を愛し抜いた私の道は。
間違ってはいなかった。
【天沢郁未 死亡】
【残り16名】