迷い、選択、その結果
神尾観鈴は、北川が向かったという施設に向かうべく、先ほどまで
死闘が繰り広げられていたとは思えないほど静かな――雨音だけは嫌に
なるほどうるさかったが――静かな、この神社を出立しようとしていた。
もう一度レーダーを確認する。そして、彼女は重大な事実に気付く。
二つの、光点。
レーダーを見る限り、自分のすぐ近くに二つの光点がある。
しかも、その二つの光点は、自分の下へと近付いてきている。
(どうしよう……)
彼女は迷った。
一刻も早くここを立ち去り、北川の向かった施設を目指すべきか?
あるいは、もしかしたらこの二人は北川のように脱出を目指して
動いている人間かも知れない。この時点になってまでなおゲームに
乗っているのだとすれば、二人一組で行動するとは思えないからだ。
だとすれば、彼らに事情を説明し、助力を仰ぐべきか?
だが、もし。
もしこの二人が他の者を容赦なく殺す『敵』であったとすれば?
彼女は誓っていた。必ず生き残ると。生き残るためには、『敵』は
撃たねばならない。もう甘えは許されないのだから。
武装面で今の彼女を越える者はそうそういないはずだ。なればこそ、
撃てば相手を一撃で屠るだろう。無論、観鈴が銃器の扱いに慣れている
はずもないので、あくまで当たればの話なのだが。
できることなら疑いたくない。信じたい。
だが、命の安売りをすることは絶対にできない。
(観鈴ちん、ぴんち……)
二つの光点は、彼女の決断を待ってくれることなどなく。
確実に近付いてきていた。