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その川の傍らで


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柚木詩子はさまよっていた。
みずからが親友と認め、おそらく向こうもそう思っていてくれたであろう人物。
里村茜をさがして。
心の内では、こうも思っている。
茜より先に死んだ自分が。
今 この「川」で茜を探すということは。
自分が茜の死を望んでいるという事ではないかと。
探しながら、彼女は自らに問う。
見つけたいのか?見つけたくないのか?
探しているのは、もしも茜が死んでいるのなら、真っ先にそれを見つけるため。
探しているのは、茜の生存を信じるため。
こうして探しているうちは。
茜が生きていると思うことができるため――――――




ふと思う。
自分は茜の親友であったかと。
茜は、自分の事をあまり語らない。
そう自分をごまかして、どのくらい時が過ぎたろう。
それは、あの時祐一に看破された。
それからまたせわしない時が続いたけれど。
ここでこうして歩いているうち、少しづつ頭をもたげてきたこと。
自分は、茜の親友だったのか。
いや。
茜は、あたしのことをどう思っていただろうか――――?



「…――私は――詩子を、撃ったんです。無二の、親友を……撃ったんです……!」
ふいに、死の直前、うっすらと聞いた言葉が響いた。無論、頭の中で。
「……えへ、えへへ。あはは。」
そう―――茜はあたしのことを、無二の親友だと思っていた。
だって、口に出してくれたもの。
………茜、いきてるよね。だったら、あたしは―――

―――ちょうど同じ時間。いや、この「川」の世界において時間など意味を持たないものではあるが。
ちょうど、同じ瞬間。

一人の少年と、一人の少女が、こことは少し違う世界―――えいえん―――に、旅立ったところだった。



―――あれ?
あたしは、どうしてここにいるんだろう。
―――川?そう あれは 川。
そう あたしは死んだんだっけ。あの島で。あの島。ゲーム。今思い出しても腹立たしい。
―――あれ?あたしは―――
喪失感。なにか忘れ物でも……いや、なにか……なくしもの?
ま、いいか。川がこっち側にあるんだから、このまま行けば天国なり地獄なり来世なりいけるんでしょ。

歩いていくうち、だんだんと視界が白くなって―――からだがぽややんとしてきて―――
あれ、どうして……
あたし、泣いてるの?
悲しい事なんかなんにもないのに、悔しい事なんかなんにもないのに、どうして―――
ああ 駄目。意識が 白く―――なに なにか―――忘れて―――

無意識下、口をついて出た、その名前。少女はその意味を理解したろうか。
少女の向かった先は何処か。天国か、地獄か、来世か、あるいは―――

「――――――茜」

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