機械


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―――ブン―――
静寂に包まれていた部屋の中にその音が響きわたる。
それはスフィーに撃たれた為に一時強制的に停止状態に陥っていたG.N.の起動音だった。

メインモニター全壊。
内部損傷率軽微。
任務遂行に特に支障無し。
よし、これなら問題無さそうじゃな。
自己診断を終えたワシは部屋の中の状況をチェックし始めた。
まずセンサーに異常に反応してる煙を施設外に排出した。
さてと、まず室内の様子を。
………チッ。
室内カメラがさっきの騒動でやられとる。
これでは室内をモニター出来ん。
「おい!ロボット!」
音声出力装置も一部やられたのか、くぐもった声しか出ない。
ロボットの反応無し。
「おい!こら!」
もう一度呼びかける。
………また反応無しか。
仕方ないな。
ワシは別のHMを呼び寄せた。
そいつの体をワシと接続し、HMの機能を使って室内をモニターする為じゃ。


―――ブン―――
さっきと同じ様な音と共にHMの目を通して部屋の様子が映った。
排出しきれていない煙で見えにくい視界に映ったのは、
一面に赤いペンキがひっくり返されたかのような
床に倒れている二人の人間とその側にいるあのロボットじゃった。
「おい!」
メインコンピュータの方の音声装置は修理しないと使えそうも無い為、
ロボットの側に近寄るとHMの声帯装置を使って声をかけた。
「は、はい?」
ようやくワシに気付いた様じゃ。
「あ〜、メインモニターが撃たれた後の説明を………。やっぱりいい。お主のメモリーを見させてもらうぞ」
その方が手っ取り早い。
「え!?」
戸惑っているヤツを無視して別のコードをロボットとワシに連結されているHMに繋いだ。


「フン、なるほどな」
ロボットからコードを抜きながらワシはそう呟いた。
「メインモニターを撃ったあのスフィーとかいう嬢ちゃんが芹香嬢と詠美嬢を殺した訳か」
「はい………」
「まぁ、CDが無事だっただけ儲けモンじゃろうな」
ロボットが持っていたCD5枚は奇跡的に無傷だった。
「それじゃ、ロボット。そこの二人の死体を片づけとけよ。ワシはまだ調子が悪いからな」
「………」
何やら落ち込んでいる様子のロボットは一歩も動かなかった。
「こら!さっさとやらんか!それともその二人をいつまでも床に転がしておく気か?ワシはそれでも構わんが」
「え!?」
「ほれ、とっとと片づけろ。その二人の扱いはお前に任せたからな。ワシは自己メンテしてるから」
「は、はい!」

ようやく動き始めたロボットを後目にワシはロボットのメモリーに残っていた映像を再生しだした。
………それにしても詠美嬢ちゃんは何をやってたんじゃ。
どう見ても先に撃っておればスフィーとか言う嬢ちゃんを殺して生き延びられたっちゅーのに。
全く分からんのう。
っと、ま〜た変な思考状態に陥っとるな。
詠美嬢も参加者の一人に過ぎんのにその死を惜しむなんざどう考えてもおかしいぞ、ワシ。
やっぱりバグがあるな、こりゃ。
ついでだしバグの原因調査もしておくかな。
簡単なバグならいいがの。あまりに酷いバグならワシの手に負えんからな。
ワシはそこで一旦全ての思考を中断するとメンテナンスモードに切り替えた。


【G.N. メンテモードに切り替え】

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