願いと約束と


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私達一行は施設を出発してから休むことなく進んでいた。
目的地は誰にも分からない。
私を突き動かすのは「行かなくてはならない」と言う訳もなく沸き上がってくる使命感。
「おい!そら!」
と突然ぴろ君に声をかけられ私は現実に引き戻された。
「何です、ぴろ君?」
こうして話をしているのももどかしい。
「こう闇雲に歩いても仕方ねぇ。ひとまず一休みしねぇか?」
ぴろ君は足を止めることなく提案する。
「そうね、私も賛成だわ」
それに私の足に捕まっているポチ君も賛同する。
「で、ですが………」
私には休んでいる暇すら惜しいというのに。
「頼む!少しで良いから休ませてくれ!もう死んじまいそうなんだ!」
ぴろ君が悲壮な声をあげる。
「ハァ、このバカの為にもそうして欲しいんだけど」
ポチ君が呆れたような声を出す。
だが私にもぴろ君の言葉が嘘であることは簡単に分かった。
ポテト君とあれだけの喧嘩をしてもケロリとしていた彼がこんなに早くバテるとは思えない。
むしろ疲れているのは私の方だ。
元々私は鳥の癖に飛ぶことがあまり得意ではなかった。
それなのにもうどれだけ飛び続けているのだろうか、見当もつかない。
きっと二人とも私のことを心配しているのだろう。
「………そうですね、この辺で休憩しましょうか」
私はその二人の好意に甘えることにした。
きっとお礼を言っても二人ともとぼけるだけだろう。
私は心の中で二人に礼を言った。


「そら。お前さんは何を焦ってるんだ?」
木陰で休んでいる私にぴろ君がそう声をかけてきた。
「そうね、私も聞いておきたいわね」
「………そうですね、お二人にはきちんとお話しておかないといけませんね」
こんな馬鹿げた行動をしている私に文句一つ言わずについてきてくれたのだから。
話しておかないわけにはいかないだろう。
そうして私は話し始めた。

突然の頭痛とともに襲ってきた形のないイメージ。
ひたすらに私を襲う思い出さなくてはならないことを思い出せない焦燥感。
頭の隅に残る「ずっと一緒」と言う誰と交わしたかすらも思い出せない言葉。
いや、そもそも誰が発した言葉であるかすら思い出せない。
だが、その言葉が私を突き動かしている。

こんな馬鹿げた話にも二人は真面目な顔をして聞いてくれた。
「ふ〜ん、つまりその『誰か』ってのを捜し出せばいいわけだな」
「………信じてくれるんですか?」
そのぴろ君のあまりにもあっさりとした物言いに唖然としながら聞く。
もし私が誰かにこんな話を聞かされたとしてもとても信じられないだろう。
「あん?何言ってんだ?戦友の言葉を疑うわけねぇだろうが」
ぴろ君は私の質問にあっさりと答えた。
「そうね、作り話にしては漠然としすぎてるわね。だからこそ私もあなたの言ってることは真実だと思うわ」
ポチ君もあっさりとそう言ってのけた。
「………」
私は驚きのあまり何も言えなかった。

「ま、その『誰か』ってのは会えばすぐに分かるんだろう?」
ぴろ君がその空気を破るかのように気軽に話しかけてきた。
「え、えぇ。恐らく」
「だったら話は簡単だな。この島に生き残ってる人間はもうそんなに居ないからな」
「そうね」
「ま、このぴろ様に任せておけば安心だな!大船に乗ったつもりでいろよ」
「何バカ言ってるのよ。アンタに任せたら出来ることも出来なくなるわよ」
「何だと!?」
「さっきまでバカみたいな面してヘバってた人の台詞じゃ無いわね」
「テメェ!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」
二人が始めた言い争いを私が仲裁する。
これはこの島での日常。
この場にポテト君がいたらポチ君と一緒にぴろ君をからかっていただろう。
でも、この場にポテト君は居ない。
だがあの幻とも言える場所で交わしたポテト君との約束は未だ忘れていない。
いつまでもこの二人と一緒に居たいということが私自身の願いでもあるから。


「ん?」
ぴろ君が耳を立て辺りを見回し始めた。
私もすぐに何者かの気配を感じ取った。
ポチ君も同様のようだ。
(何かが近くに居るみたいだな)
(そのようですね、どうします?)
(そら、お前はすぐにポチと一緒に逃げられるようにしておけよ)
(あら、心外ね。これでも自分一人の身ぐらいは守れるわ)
(ヘッ、そうかよ。………よし、三人で様子を見に行くぞ)
警戒態勢を取りながら私達はその気配のする方へ近づいていく。
そこで一人の少女が眠っているのを発見した。
「おい、そら。こいつか?お前の捜し人は」
ぴろ君が前足で少女の顔を叩きながら聞く。
「いえ、違います」
何となくだが彼女は違うということは断言できる。
「そうか、それじゃ………」
ぴろ君が何かを言おうとした瞬間―――。
「う、うぅん………」
彼女が目を覚ました。
そのあまりにも突然の出来事に私達も彼女もただお互いを見つめることしか出来なかった。



【ぴろ・そら・ポチ マナと遭遇】

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