集うものたち


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「居た、居たよ!ボクの言った通りでしょう北川さん!」
「おお!すげえ!ホントに見つけちまったよ!おーい!千鶴さーん!」
 声を掛けた人物がこっちを振り返り、驚きの表情を浮かべる。
「千鶴姉!あ、あれって・・・」
「あ、あゆちゃんに北川君!一体どうしてここに?施設はどうしたの?」
「ちょ、ちょっとまってくれ・・ハア・・ハア・・く、苦しい」
「ボ、ボクも・・・はあ・・疲れちゃった・・・・」
 かなりの距離を本気で走る。梓のように普段から鍛えていない二人には、きつい距離だ。
 最初から最後まであれだけの全力疾走をみせていれば、当たり前のことではあるのだが。
(ん、んなことより・・・)
(うぐう・・・そんなことより・・・)
 二人の思いは、一つ
『どうして神尾さんが走っていた俺(ボク)達より早いんだよ――――!!』
 ひどく間抜けな声が、島に響いた。



「そんな・・・冗談だろ?北川」
「残念だけど本当の事だ、俺だって冗談を言っていい時と悪い時の分別ぐらいはある」
 支給されたペットボトルの水を被りつくように飲みながら、北川が答えた。
「じゃあ・・施設に残っていた三人は・・・・」
「ああ、多分なんらかのトラブルに巻き込まれたんだろう・・・・・」
 北川の話はは、他の事に構っている余裕のなかった千鶴達にとって衝撃をもたらすと共に、今後の行動計画を考えさせるものとなった。
「とりあえず、これ以上バラバラになるのはよした方がいい、管理者のおっさんや、その・・・神奈とか言うバケモンが動いているしな」
「ああ、単独行動は控え、生き残り全員で動いた方が生存率も上がる。よく考えたら常識だな・・・」
 観鈴の手当てを受けながらそう答えた彰が、空を見上げる。
(でも、僕には関係ない)
 そう思い、目を閉じて、亡き人を想う。
(そうだ、僕はどんな結末であろうとこの島で死ぬ。それが初音、君に対する僕の・・・・)
「あ、あの・・・・」
 突如掛けられた声に、意識が現実に戻され、彰は目をゆっくりと開けた。
 声の主は、神尾観鈴とかいう少女。
「手当て、終わりました。どうですか?」

「うん、だいぶ良くなった。ありがとう」
 素直に礼を言う。楽になったのは事実なのだから。
「で、どうします千鶴さん?とりあえずあの施設に居たメンバーは・・・」
 ピィー!ピィ―!ピィ―!
「な、なんだ?」
 突如鳴り響く、警戒音にも似た音。
「あ、わ、私です!こ、この機械が・・・」
 慌てて観鈴が、ポケットから探知機を取り出し、側にいた北川に手渡す。
「ふむ、どれどれ・・これは・・・誰か近づいてくる!069と092だぜ!この番号は確か・・・」
 北川が考えている間に、また新しい生存者たちが近づいてくる。

「居たわよ!北川に・・・・良かった!神尾さんも居るわ!」
「ふう・・だから走るペースが早過ぎるって言ったのに晴香ったら聞いてないんだから!」
「まあ、何故か私達より早く北川に追いついてるし、気にしない事ね、巳間さん」
(ホントにむかつくわね・・・このガキ・・・)
 それぞれに想う事は違えど、彼女達もまた、集まった。



「え、じゃあもうほとんどの人が集まっているんですか?」
「ああ、もうこんな馬鹿げたゲームに乗る奴は居ない!後はこのゲームの黒幕をみんなで倒して、帰るだけだ!」
 森の中を、走る人影が一つ、耕一と彼に担がれているマナの二人だ。
 耕一はあの後すぐに解毒剤をマナに投薬し、さっきまでみんなで集まっていた場所の周辺に向かっていったのだが、
 あの場所には繭達はいなく、すでに動いていた後だったが、ぽつんと置かれたバッグに入っていたメモには『森の方に移動しています』と書かれていた。
 そのメモと僅かに残っている出来て新しい足跡を頼りに、二人は動いている。
「マナちゃん!大丈夫?」
 耕一が背中に居るマナに声を掛け、彼女を気遣う。
「は、ハイ、大丈夫です。薬も効いてきたみたいですし、もう私、自分で歩きます」
「ダメだよ、まだ安静にしてなきゃ、ホントは動かすのもヤバイんだけど、早いとこみんなと合流しないといけないから、ゴメンね、マナちゃん」
「・・・・・・・」
 マナは何も言えない、いや、何もいえなかったという方が正しいか。
 耕一のの背中の温かさと、あまりの優しさに、涙を必死にこらえていたから。
 でも、今は泣かない。
 泣くのは、生き延びてからだ。
 そして生きて島を出れたら、この人にはっきりと言おう。
 好きです――と、



 始まりは、100人。
 今は、たったの12人。
 いくつもの恐怖と絶望、悲しみと過ち。
 この地獄の日々は、
 今、まさに最終章を迎えた。

【残り 12人】
【柏木千鶴 柏木梓 北川潤 月宮あゆ 神尾観鈴 七瀬彰 椎名繭 七瀬留美 巳間晴香 森に集まる】
【柏木耕一 観月マナ 森に移動】

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