長いお別れ


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煙草を捨ててしまったことが悔やまれる。
口が寂しい。右手に持ったライターのふたを指で
かちかちと弄びながら歩いていた。
人の気配を感じてそちらの方に目を向けると、すすり泣いている
女の姿が目に飛び込んできた。
あいつは確か参加者の……。

参加者に対する管理者側の優越からくる油断。
高野はその女の方にゆっくりと近づいていく。
「どうした?」
女は悲しい顔をして高野の方を見るだけだ。
そんな女の様子を見て高野は傍まで行って女に声をかけた。
女は高野の声をうけて微笑む。
「知っておるか?お主のような奴をうつけものというのじゃぞ」
カチャリと音をたてて高野の胸に銃をつきつけて引き金をひいた。
ゼロ距離射撃。血や骨、臓物が高野の背中から飛び散った。

俺は優しいんじゃなくて……甘いだけだったんだな。
気が向いただけなどと理由をつけて参加者を見逃す。
そして、同じ理由で参加者の怪我人を助ける。
甘いだけだったんだ。……他人にも、そしてなにより自分に。
強くなければ生きられない。優しくなければ生きていく資格がない。
俺は強くもなければ優しくもなかったわけだ……。
「この島に来て何も学んでおらぬのか?
 ふんっ!阿呆を殺してもおもしろくもないわ。興醒めじゃな」
「……僕じゃ、役者不足かい?」
どさりと後ろに倒れる高野の身体。
そのうつろな瞳に映った男の名は……七瀬彰。



【高野 死亡】【七瀬彰 神奈と遭遇】

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