ためされる絆
「みな……さん」
その声に振り返った先、そこには神尾観鈴の姿があった。
「観鈴ちゃん……?! 何故そんなとこに、施設の中にいたんじゃ……」
「中が……中が大変なことに…」
まさに満身創痍の様相で皆に近づく神尾観鈴。それに耕一がかけよる。
彼女が倒れる寸前のところでなんとか観鈴の体を支えることが出来た。
「なにがあった?」
「私、地下の部屋にいたんです。そしたらいきなり襲撃をうけて……、いっしょにいた
北川さんが私の盾になってくれて……、それで私だけは天井の穴から逃げ出せたん
ですが北川さんは……」
「くそっ、神奈備命め。もう別の人間に取り付いたっていうのか」
彰のその言葉に、先程までにはしゃいでいた皆が一気に静かになった。
「それで……、神奈はだれにとりついたんだ?」
怯えはある……、だけど決意をこめて耕一は聞いた。
「耕一さんっ!!」
「マナちゃん……、分かってくれ……いや、分かってくれなくてもいい。
でもな、多分今はやらないといけない時なんだと思う」
「だけど……」
「だから俺は決着をつけようと思う」
「そんな……そんなの、間違ってい……」
「ああ!! 間違っているさ! 絶対にこんなの間違っている!! だけど俺にはもう
他に方法がわからないんだ! わからないんだよ……」
みると、耕一の両の眼から涙が溢れ出してる。でも、彼はそれを拭いもせずに
観鈴に訊ねた。
「教えてくれ、観鈴ちゃん。今度こそみんなで決着をつける。神奈備命は誰に……
誰にとりついたんだ」
「誰だと思います?」
「今生き残っていて、施設の中にまだいる者……」
耕一は言う。
「千鶴姉と繭ちゃんは違うな。中から銃声みたいな音がする前に私は二人を見た」
と、梓。
「後は、七瀬さんと巳間さん……か」
彰が続ける。そして再び皆の目が観鈴に集中した。そして観鈴は
「はい……、襲い掛かってきた人物。それは七瀬さんです」
「もう、方法は無いの……ねえ、みんな。ねえ、耕一さん…」
消え入りそうな声でマナは呟いた。
「わからない。だけど俺はまだ絶望しちゃいないよ。だって」
耕一は言う。半分はマナのため、そしてもう半分は自分に言い聞かせるために。
「北川はやってくれた。結界は発動したんだ。だからチャンスは絶対に……」
「そんな筈はっ!!!」
突如、驚愕の声をあげる神尾観鈴。
「……?」
「あ……いや…、私、北川さんが打たれたの見たから……」
「ほら、4つの光の柱。おそらく例のCDだよ。多分、北川の奴が最後の最後に
やってくれたんだ」
「っ!!……そうですか」
(なあ、観鈴ちゃん、相当まいってないか?)
(……確かに)
そのやり取りを、あゆだけは少し離れて見ていた。違和感を感じた。最初、
観鈴が姿を見せたときから感じていた違和感。それは、どこか懐かしいようで
どこか冷たいなにか得体のしれないもの。そしてみんなとの会話。
何故、彼女は神奈がのりうつった先をすぐに言わなかったのだろう? そして
結界の事を聞いた時みせた表情。確かに説明することは可能だ。だけれど……
(うぐぅ……、でも何かが……何かがおかしいよ、絶対に)
「あゆちゃん。みんなかたまって動こう」
耕一の声にはっと我に返る。みなが呼んでいる、今は行かなきゃ。
その時あゆは見た。みんなと一緒にこちらを見る神尾観鈴の目を。
それはほとばしる鋭い意思、そして闇……そして、あゆを品定め
するかのような光があった……。