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すくいきれないもの


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 ぴろはただ、その光景を見終えて立ち尽くすのみだった。
 終わってしまった。
 そう、全て終わってしまった。
 そらは結局、最後まで彼女を守ろうとして――そして守ってみせたのだろう。
自らの全てと引き替えに。

 一方の自分は。
 約束は果たせず終い。
 仇はもういない。
 戦友も、誰も残っていない。

(俺がやれること、なくなっちまったか)

 どうして、自分が生き残ってしまったのだろう?

(疲れた――)

 彼はその場にへたり込んだ。元々無理を押してこの決戦の地までやってきた
のだ、緊張の糸さえ切れてしまえばまともに動けるはずもない。

(本当に、疲れた――)

 生きることがどんなに辛かろうと。
 それを投げ捨てることだけは、絶対に許されなかった。
 誰が何と言おうと、それが生き残った者の責任なのだから。



 耕一は、ただ地に伏して。
 この凄惨な結末に打ちのめされていた。

 観鈴も、彰も、千鶴も。
 何故死に逝くその顔は、あんなにも安らかだったのだろうか?

『――ありがとう』
『初音ちゃんのこと……頼むよ』
『おかあさんも、”ようやった”って……言ってるよ』

 彼らの最期の言葉を思い出す。

(俺は――本当によくやれたんだろうか?)

 神奈だけを斬ることは果たせた。
 だが、あの言葉に込められた千鶴の本当の望みは。
 観鈴を救うこと。
 その観鈴は、自分を助けるために命を落としたのだ。

(俺は――)

 今は、そんなことで悩んでいるべきではないだろう。後を託された者として、
やるべきことをやり、為すべきことを為さねばならない。
 それは分かっている。
 しかし、分かってはいても、立ち上がることはできない。

(結局、俺は――何もできなかったんじゃないのか?)

 耕一の問い掛けに答えてくれる者は、誰もいなかった。



 耕一に捨て置かれた、その刀の内では。

――嫌じゃ、余はもう嫌じゃ――

 哀れな敗北者による、最期の、そして無駄な抵抗が行われていた。
 ある意味では、何よりも、それこそ自身の消滅よりも恐れていたこと。
 敗北。そして封印。

 今や神奈には、何の力もない。

 ただ呪いを受け続けなければならない。
 ただ夢を見続けなければならない。
 この千年の間、それを強いられてきたように。これからも、ずっと。

――嫌じゃ、余はもう嫌じゃ――

 また、自らの目の前で柳也を失うのだろうか?
 また、自らの手によって柳也を殺すのだろうか?

 幸せを掴もうとしても、決して掴めない。
 それは指の合間をすり抜け、こぼれ落ちてゆく。

――嫌じゃ、余は、もう――

 彼女はただ、泣き叫ぶ。たとえそれが、誰にも届かなかったとしても。

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